時計の針を昨年7月6日の午前11時に戻す。このとき損保ジャパンの社内では、白川儀一社長をはじめ総勢9人の役員および部長が非公式のミーティングを開いていた。議題は、5日後の7月11日に来訪するビッグモーターの兼重宏行社長(当時、以下同)への対応だった。
入庫再開の流れをつくった冒頭発言
しかし、議論は兼重社長への対応方針よりも、ビッグモーターへの入庫再開に流れていった。損保ジャパンは全国的な保険金不正請求の疑いを強め、ビッグモーターの24工場に対して事故車を紹介(入庫)することを6月15日から停止していた。
入庫再開の流れをつくったのは、首都圏営業担当としてビッグモーターとの窓口になっていた中村茂樹専務(現在は監査役)の発言だ。
ミーティングの冒頭、中村氏は「(ライバル社である三井住友海上火災保険がビッグモーターに対し)これ以上(不正請求調査の)深堀りはしないなど甘いささやきをしている。三井住友海上があいおい(ニッセイ同和損保)と連携していることは間違いない」と切り出している。
三井住友海上が同じMS&ADグループのあいおいを受け皿にして、ビッグモーターの保険代理店から割り振られる自賠責契約を奪おうとしていると説明し、役員たちの危機感をあおったわけだ。
任意保険を含めて、120億円に上る売り上げ(収入保険料)が急減することへの危機感と焦燥感を覚えた白川社長が、入庫再開をミーティングの場で提案することにつながっていった。
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