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損保ジャパン「社長の弁明」に垣間見えた矛盾 「代理店の不正は必要悪」との意識が透ける

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損保ジャパンの白川社長が辞任を表明した会見で語った一言。そこからみえる矛盾とビッグモーターで起きた保険金不正請求問題の根深さとは。

損保ジャパン白川社長
「大型代理店であるビッグモーターから大きな反発を受けることを恐れ、厳正な対応ができていなかった」と記者会見で述べた、損保ジャパンの白川儀一社長(撮影:尾形文繁)

「局所的、限定的なところで起きていると、誤って認識してしまった」

中古車販売大手ビッグモーターの保険金不正請求問題をめぐって、損害保険ジャパンが9月8日に開いた記者会見。白川儀一社長は、昨年夏にビッグモーターとの取引をいち早く再開した理由をそう説明した。

不正を黙認し、自ら決めた取引再開。会社や契約者への背任行為とみなされ、刑事上、民事上の責任を問われる可能性がある信じがたい意思決定だった。

一見すると、当時の経緯を白川氏が正直に話しているように思えるが、この「局所的、限定的」という発言には大きな矛盾がある。昨夏の取引再開に至るまでの経緯を振り返りながら、その矛盾と発言の真意について検証していこう。

「全国的」と認識していたはず

事の発端は2021年11月、ビッグモーターの従業員から日本損害保険協会に対して「上長の指示で過剰な自動車の修理をして、その費用を保険会社に請求している」という旨の内部通報があったことだった。

内部通報を受けて、ビッグモーターとの取引額が大きい損保ジャパン、東京海上日動火災保険、三井住友海上火災保険の3社は2022年2月以降、修理費の請求書類を各社それぞれ数百件、合計で1500件抽出してサンプル調査を実施した。すると、全国に33ある板金工場のうち25の工場で、水増し請求の疑われる案件が3社合計で86件見つかったという。

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