ただ、中村氏による三井住友海上の「抜け駆け説」は、かなり無理筋な話だ。当時の経緯を詳細にたどると、白川社長を入庫再開に誘導するために発言したのではないかと疑われるような動きが実は散見される。
7月6日の関係役員ミーティングから、さかのぼること約2週間前。損保ジャパンの営業担当者は、ビッグモーターの板金部門を統括する取締役と板金部長から、不正請求問題について「早期の幕引きを希望している損保会社がある」と聞かされる。
ビッグモーター板金部長が損保ジャパンに激怒
さらに、損保ジャパンの関係者によると、6月28日にあったビッグモーター板金部長と損保ジャパンなどからの出向者の宴席で、板金部長から「今後はあいおいを中心に自賠責を割り振っていく方針だ」という趣旨の発言があったという。その発言はすぐさま損保ジャパン社内に連携され、三井住友海上とあいおいが結託して自賠責契約を奪いにきているのではという懸念が一気に強まっていった。
翌6月29日、ビッグモーターの板金部長と損保ジャパン、三井住友海上、東京海上日動火災保険の3社の保険金サービス部門による協議の場で、損保ジャパンの担当者はその懸念をさらに強めることになる。
不正請求問題を調査する第三者委員会の設置について、板金部長が「調査が長期化するのであれば、第三者委の設置は回避したいと兼重社長が言っている」と話すと、三井住友海上と東京海上の2社が「(不正請求問題を調査する)第三者委員会を設置すれば、事態の早期終結につながるのでは」と応じたのだ。
三井住友海上と東京海上の担当者は、ひとたび第三者委を設置すれば、調査範囲が拡大し長期化することは十分に理解しながらも、設置案を何とかビッグモーターにのませるために「早期終結につながる」と発言したとみられる。
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