ティーチングは、コーチが選手に答えを教える指導法だ。
対して、選手が答えにたどり着くための質問をコーチが投げかけたり、絶妙な距離で寄り添ったりしていくのがコーチングである。
この2つをどう使い分けるか。スポーツ界はもちろん、ビジネスの世界でも、人を指導する者にとって重要なテーマだ。
成功した選手には「自分の頭で考えられる者」が多い
野球界の場合、子どもの頃から結果を早く求めるあまり、大人のコーチが教えすぎる弊害がよく指摘される。
とくに強豪チームでは監督が作戦から練習内容まで細かく指示し、選手を“ロボット”のように扱う場合も少なくない。
そうして育った選手は社会に出ると、「野球選手は指示を与えなければ、自分で動かない」という“指示待ち人間”と見られてしまう。
対して、成功した選手は「自分の頭で考えられる者」ばかりだ。大谷翔平(ロサンゼルス・エンゼルス)やダルビッシュ有(サンディエゴ・パドレス)が好例だろう。
西武で言えば、浅村栄斗(現東北楽天ゴールデンイーグルス)や外崎修汰は入団当初こそ感覚派(本能的)だったものの、主力になった頃には思考力が磨かれ、自分の感覚を的確に表現できるようになった。
裏を返せば、そうした考え方を身につけたからこそ、野球の成績も伴ってきたのだろう。
かたや、二軍で燻っているなかには考える力が不十分の選手が少なくない。坂井氏は研修で多くのアスリートと接し、後者にこそ思考トレーニングが必要だと痛感している。
「現時点で結果を出せていないアスリートは、おそらく今のやり方を続けていてはダメです。フィジカルが圧倒的に優れているわけでもなく、センスがものすごいわけでもないなら、頭を使うしかありません。どんなスポーツやチームでも、そうした選手たちが座学研修の対象になっているケースが多いです」
無料会員登録はこちら
ログインはこちら