確かに、プロの世界で突き抜けるなかには“宇宙人”と言われるタイプがいる。
周囲には何を考えているのかわかりにくいものの、抜群の身体能力やセンスで飛び抜けた成績を残すのだ。結果がすべてのプロ野球では、それで良しとされる。
坂井氏は、3分の1がこのタイプに当たると感じている。筆者の感覚ではもっと少なく、5分の1だろうか。
愛斗は長打力、強肩、守備範囲など高い身体能力を備え、2021年に97試合出場と飛躍。翌年には121試合に起用され、レギュラー定着を期待された。だが、ボール球に手を出す傾向が強く、2023年は73試合と出番を減らしている。
課題克服の後押しとして「考える」機会を設ける
スポーツの難しい点は、課題が明らかでも、克服する方法は簡単に見つからないことだ。
その原因は思考にあるのか、技術不足か、あるいは両方か。愛斗が頭を使うタイプか、破天荒タイプかはわからないが、壁を乗り越えなければレギュラー定着には至らない。
球団はその後押しとして練習メニューの提供、思考トレーニングなどの機会を設けるが、選手は個人事業主であり、どの方法を選択するかは最終的に彼ら自身に委ねられる。
この点がプロ野球という組織で人材開発を行う難しさだ。
結局、選手自身が考えて行動し、結果を出すしかない。だからこそ西武は「主体的に取り組める」選手を育てようとしている。
では改めて、「考える」とはどんな行為だろうか。
野球界の指導でも「ちゃんと考えろ」と軽々しく使われるが、深く掘り下げる機会は決して多くない。だからこそ、坂井氏は「ちゃんと考えるべき」と指摘する。
「考えるとは、構造化するということです。何がどうなっていて、どのようにできているか。そうやって考えることを通じ、自分の現状を把握します。そもそも自分はどこを目指しているのか? 周りから何を期待されているのか? 両者を比較し『私は今やっていることを続けるべきか? やめるべきか?』と整理する。これが『ちゃんと考える』ということです」
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