そうした説明が講師からされた後、「うまく使いこなせない要因はなんですか?」と再び問われると、モニターに文字が映し出された。
見えにくい「思考のクセ」を明らかにしていく
近年、ピッチングやバッティングは最新テクノロジーで動作の特徴が可視化され、選手個々のクセは改善しやすくなった。
対して、頭の中で行われる思考は見えにくい。だからこそ、まずは傾向を知ることが大切だ。そのうえで必要があれば修正していく。
思考のクセは学術的に「認知バイアス」と言われ、200種類以上あるという説明もされた。
西武では、こうした「獅考トレーニング」が2014年から行われている。森友哉(現オリックス・バファローズ)や山川穂高がルーキーの頃に始められた。
研修では「思考のクセ」を明らかにする第一歩として、「靴下はなぜ履いていますか?」という質問が投げかけられた。
「みんながそうしているから」「なんとなく」「これまでずっとそうしてきたから」と選手たちが返答していく。講師によると、答えに「思考のクセ」が表れているという。
こうした自身の考え方は、改めて整理する機会がなければ気づきにくいだろう。
だからこそ、アスリートが思考トレーニングを行う意義がある。スポーツの指導は「ティーチング」から始まるケースが多く、そこに落とし穴が潜んでいるからだ。
研修を請け負う株式会社ホープスの坂井伸一郎社長が説明する。
「私が行っていたテニスでは、フォアハンドとバックハンドの打ち方を教わるところからスタートします。スポーツは必ず、ティーチングから始まるんですよね。それからある程度のレベルに達するまで、どうしてもティーチング一辺倒になる。だから『次は何をやればいいですか』と聞いたり、指示を待っていたりする選手がすごく多くなると思います」
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