トヨタのEV普及、カギ握る「出光の固体電解質」 出光のキーマンが明かす苦節30年の開発秘話

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その後、10年かけてトヨタと出光は「柔らかく伝導性の高い固体電解質」に磨きをかけ、ついに量産化へのメドをつけた。

出光は2021年に千葉県市原市の千葉事業所で、2022年には同袖ケ浦市のリチウム電池材料部内に小型プラントを建設し、固体電解質のサンプルを製造してきた。今回、千葉事業所で年産数百トンの大型プラントを新たに立ち上げ、量産化に向けた最後の実証を進める。

山本氏は「固体電解質は空気にも水にも触れさせてはいけない。一昔前に比べて1桁小さな粒が要求される。粉体は液系に比べてスケールアップが非常に難しい。何が起きるかわからない」と話す。

量産化のハードルは依然高い

それでも、両社は2027~2028年に全固体電池搭載のEVを実現することを宣言した。量産化のハードルは依然高いが、残された時間は多くはない。

トヨタの佐藤社長は「今回の協業で材料の入り口から電池製品という出口まで一気通貫でやる。ブレイクスルーを一体感を持ってスピーディーに実現していく。最終的には日本の産業の国際競争力を高める」と言う。

世界がしのぎを削るEV向け全固体電池で、日本は市場を席巻することができるか。両社の挑戦はいよいよ本番を迎えることになる。

森 創一郎 東洋経済 記者

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もり そういちろう / Soichiro Mori

1972年東京生まれ。学習院大学大学院人文科学研究科修了。出版社、雑誌社、フリー記者を経て2006年から北海道放送記者。2020年7月から東洋経済記者。

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