急成長を遂げた中国の車載電池業界が、早くも淘汰の時代を迎えつつある。
業界団体の中国汽車動力電池産業創新聯盟(動力電池聯盟)が5月30日に発表した年次レポートは、車載電池市場の最新動向として需要サイドに構造的変化が生じていることや、上位の電池メーカーによる(市場の)寡占化が進んでいることなどを指摘した。
このレポートによれば、中国は2024年も引き続き「新エネルギー車」の世界最大の市場であり、年間販売台数は前年比14%増の1083万台、それらに搭載される車載電池の総容量は同36%増の527GWh(ギガワット時)に達する見通しだ。
(訳注:「新エネルギー車」は中国独自の定義で、電気自動車[EV]、プラグインハイブリッド車[PHV]、燃料電池車[FCV]の3種類を指す。通常のハイブリッド車[HV]は含まれない)
電池の需要に構造的変化
だが、2023年初めからテスラや比亜迪(BYD)が仕掛けた価格競争をきっかけに、中国の新エネルギー車メーカーのほとんどがコスト重視に舵を切り、電池の需要に構造的変化が生じた。
その象徴と言えるのが、PHVやレンジエクステンダー型EV(EREV)の急成長だ。車載電池だけで走行するEVは、航続距離を稼ぐために大量の電池を搭載する必要があり、それがコスト高の要因になっている。
その点、PHVやEREVは(エンジンを併用するため)同じクラスのEVに比べて電池の搭載量が3分の1で済み、メーカーはコストを大幅に抑えられる。さらに消費者の間でも、電池切れの心配が小さく価格も相対的に安いPHVやEREVを積極的に選ぶ傾向が強まった。
その結果、2023年からPHVやEREVの販売の伸び率がEVを上回るようになった。中国汽車工業協会のデータによれば、中国市場における同年のPHV販売台数(EREVを含む)は280万4000台と、前年比84.7%増加。これに対して、EVの販売台数は668万5000台と絶対数では2倍以上だが、前年比の伸び率は24.6%にとどまった。
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