トヨタのEV普及、カギ握る「出光の固体電解質」 出光のキーマンが明かす苦節30年の開発秘話
その後、大阪府立大と共同研究を重ね、2004年には新しい組成を検討し、原料の純度を上げたことで電解液と同等のイオン伝導度を達成。耐熱性にも優れていた。2006年には手作りの電池を試作して、国際電気自動車シンポジウム(EVS-22)の展示会に満を持して出展した。
「ところが、電池メーカー、自動車メーカーからは『この材料から大型で量産できる電池をいったいどうやってつくるのか』と言われ、さらなる実証を求められた。材料の性能を示せれば、あとはメーカーが開発してくれるだろうと思っていたが、実証をしないと電池開発につながらないことを痛感した」(山本氏)
電池メーカー「固体電池などやるわけがない」
それでも2006~2009年にかけ、電池メーカーに売り込みを図ったが、時は液系リチウム電池が盛り上がってきた時代。「固体電池などやるわけがないだろうと言われ続けた」(同)という。
2009~2010年には国際二次電池展でラミネート型(積層型)電池の見本をつくり、カーナビを動かすデモ展示も行った。避難経路の看板や手術道具の熱殺菌などで耐熱性の高い電池にニーズはあったが、いかんせんニッチ。
だが、この頃から自動車業界で全固体電池への関心が高まっていく。トヨタ自動車が電池研究部を立ち上げたのは2008年。出光にとって全固体電池を実現するためのパートナーとして、開発、量産、販売を担ってくれることが必要だが、この3つの要素が1社で揃っているメーカーの一つがトヨタだった。
「(2013年に)私がトヨタとの共同研究を決めた。材料を広く売りたいという思いがあり、みんなと等距離でやるか、トヨタに集中するかはだいぶ悩んだ」と山本氏は明かす。
「特許の状況などからみて、トヨタとの共同研究はありかなと判断した。ただ、その後もほかのメーカーとも常にやりとりはしている。今後もそのスタンスは変わらない」(山本氏)
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