トヨタのEV普及、カギ握る「出光の固体電解質」 出光のキーマンが明かす苦節30年の開発秘話

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トヨタは6月、10分以下の急速充電時間で航続距離が現在の2.4倍になる全固体電池搭載のEV(約1200km走行可能)を2027年にも投入する目標を明らかにしている。

全固体電池の核となる材料が、固体電解質だ。製油所から石油精製の副産物として排出される硫化水素(H₂S)を原料にして、これに水酸化リチウム(LiOH)を反応させ、硫化リチウム(Li₂S)ができる。さらに五硫化二リン(P₂S₅)を反応させることで硫化物系固体電解質が製造できる(Li₂S-P₂S₅-X)。この「X」の組成が電解質の特徴のカギとなる。

10月26日から開催されたジャパンモビリティショーでは、トヨタのバッテリーEVのコンセプトモデルが公開された(撮影:鈴木紳平)

出光は30年以上前から研究を進め、粒子の表面の形状などから柔らかいのに伝導度が高い(イオンの移動が速い)という特徴を持つ固体電解質の開発に成功した。これがトヨタの求めていた密着性などが高く、体積変化に柔軟な固体電解質の特徴に合致した。

「耐久性に関する課題はとくに重要。出光の固体電解質は粘り強く、柔らかい組成で精製されることが非常に大きなポイントだった」と、トヨタの佐藤社長は会見で語った。

開発の発端は製油所から出てくる硫化水素

ただ、出光は一朝一夕にこの固体電解質にたどり着いたわけではない。

「開発の発端は、リファイナリー(製油所)から出てくる硫化水素にどうやってお金をつけて付加価値を上げるかということだった。われわれとしては機能性樹脂の品ぞろえを広げたいという思いで開発をスタートさせた」

こう話すのは、出光興産リチウム電池材料部の山本徳行主幹部員だ。山本氏は出光興産の石油化学部門を経て2008年から一貫してリチウム電池の開発を主導してきた。

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