小室直樹は20世紀から届けられた最終兵器だ 「日本人のための経済原論」復刊に寄せて

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そもそも資本主義とは、人間の欲望をエネルギー源に、競争し活性されて発展するものだ。そこに正義も博愛主義もない。誰かが儲かれば、誰かが損をする。それだけの話だ。

日本が真の資本主義国家を目指すのであれば、民間企業の自由競争を妨げるような愚行は一刻も早くやめるべきだ。また、経営危機で倒産に瀕した企業を国家は救ってはならない。

しかし、バブル破綻、リーマンショックを経験して、日本では、それとは正反対の事象ばかりが起きている。

「経済官僚は経済学が分かっていない」

「経済官僚は、経済学が分かっていない」とは小室氏の言葉だが、2015年の現在も、それは続いている。ある官僚から聞いた話だが、「政府には、競争抑制の原理があって、業界を牽引している大手が経営危機になると救うのが常識」らしい。なぜなら、大手が倒産すると業界のバランスが崩れて、激しい競争が生まれる。それを防ぎたいというのだ。

また、国家財政が事実上破綻しているのに「税収が増えないのであれば、赤字国債を発行すればいい。国債が売れ残ると大変だから、日銀は率先して買え。国債を買う資金がなくなりそうなら、カネを刷ればいい」という到底信じがたい政策を推し進める総理に、誰もダメ出しができない。

小室氏の言に付け足すとすれば、そのだらしなさはマスコミも同様で、彼らも経済学を理解していない。いったい日本はどうするつもりだ!

とまれ、いまだに日本国内では危機感は薄い。何かがマヒしているのか、あるいは無関心が蔓延してしまっているのか。いずれにしてもこのままでは、日本経済は座して死を待つだけに思えてならない。

そこまで考えるに至って、己の勘違いに気づいた。資本主義の真理を語るのに、経済学なんて不要だと思っていたが、それは誤りであったと。

資本主義とは、動物の生存競争そのものだと私は解釈している。競争に負けるのは、必然的な理由がある。その結果、その種は“淘汰”され、環境に即した生態系が維持される。それを無理に歪めると、生態系が破壊される。このルールと資本主義はまったく同じでないか。だから、わざわざ経済学を持ち出さずとも、日本の中途半端の矛盾は理解してもらえるはずだと、これまでは確信していたのだ。

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