小室直樹は20世紀から届けられた最終兵器だ 「日本人のための経済原論」復刊に寄せて

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ところが、小室氏が生前『バイアウト』を気に掛けてくださって、「一度会ってみたい」とおっしゃっていたと聞き、ならば恥を忍んで恩返しをせねばと、この大役をお引き受けした。

そして、改めて本書の元となった『小室直樹の資本主義原論』と『日本人のための経済原論』を拝読し、遅まきながら小室氏が私の作品にあの推薦文をくださった意味をかみしめた。

日本は資本主義国家ではない

本書で小室氏は、日本はまだ資本主義国家ではないと繰り返し述べている。

「資本主義、即ち、自由市場の原理とは『淘汰』であり、淘汰とは、失業と破産にある―」

そう断言し、日本ではそれが正しくなされていないと一刀両断されている。上記の言葉は至言であり、私自身がハゲタカシリーズを書くたびに、何度も実感しているものと同じだ。

潰れそうな企業を国が守る。

市場を国がコントロールして危機を防ぐ。

経済行為に善悪や博愛主義を持ち込む―。

なぜ、こんな不自然なことが起きるのかを、ずっと考えてきた。そして見えてきたのは、日本における資本主義の偏った考え方だった。日本では、厳然と存在するマイナス面(リスク)に目を向けず、資本主義のプラス面ばかりを強調するきらいがある。

さらに、リスクが顕在化したら、経済の専門家までもが一斉に「国が何とかしろ!」と叫び出す。そうなると、「政府は自由主義市場に口を出すな」という資本主義の大前提は吹き飛んでしまう。どう考えても、この国は資本主義国家ではない。本当の資本主義とは優勝劣敗、弱肉強食でしか成立しないのではないか。

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