クマムシ研究で培われた、生きるための力 地上最強生物とそれに恋した男の話

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地上最強の生物と呼ばれるクマムシ(写真:ppex / PIXTA)

今や「クマムシ」といえば、「あったかいんだから~」で一気にブレークしたお笑いコンビをイメージされるかもしれない。だが、ここで紹介したいのは彼らのことではない。「地上最強の生物」と呼ばれている、体長約1mmの無脊椎動物のことである。

このクマムシ、普段は水中にある藻類の表面などに住んでいるという。水がない場所へ移すと体内から脱水が起こり、「乾眠」という仮死状態へ移行する。この時クマムシはピクリとも動かなくなるため、側から見ると一見死んでしまったかのように思える。しかし水を与えると、まるで再び命を得たかのように活動を始めるのだ。

驚くのはこれだけではない。乾眠クマムシはとてつもないストレスに耐えることもでき、マイナス273度の低温から100度の高温のもとでも生き延びられるという。さらに、人間の致死量のおよそ1000倍に相当する放射線量、水深1万メートルの75倍に相当する圧力など、人間には到底耐えられないストレスへの耐性も持っている。これだけで、クマムシが「地上最強の生物」と呼ばれている理由がおわかりいただけるのではないだろうか。

クマムシとの出会い


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本書『クマムシ研究日誌: 地上最強生物に恋して』は、そんなクマムシの生態が余すところなく描かれた一冊である。しかし、単にクマムシの特徴のみが解説された本ではない。その最大の特長は、クマムシの魅力と共に、クマムシを第一線で研究する著者・堀川大樹氏の考え方や行動力も描き出されていることにある。

 堀川氏は大学4年次に、乾眠クマムシが蘇る姿に感動し、クマムシ学の道へ進むことを決意した。北海道で採取したクマムシを用いて研究を進め、大学院生の時には、「世界で誰も調べていないクマムシの特徴を発見した!」という自信と共に、世界中のクマムシ研究者が集う「国際クマムシシンポジウム」に参加することになるのだ。

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