原爆はこうして広島・長崎に投下された

物理学者は、いかに世界を恐怖へと導いたか

物理学者たちは、いかに世界を残虐と恐怖へ導いていったのだろうか?(写真:Midipa / PIXTA)
If politics is the art of the possible,
research is surely the art of the soluble. 
政治を可能性追求のアートとするならば、
研究は間違いなく問題解決を追求するアートである。

 

免疫学でノーベル賞を受賞したピーター・メダワー卿の言葉だ。本書『原子爆弾 1938~1950年―いかに物理学者たちは、世界を残虐と恐怖へ導いていったか?』は、原子爆弾の開発において、この言葉が現実化した過程を描いたものである。

こんな本は読んだことがない。当たり前かもしれない。あるひとつのことをめぐって、これだけいろいろなことが錯綜した物語はほとんど存在しないのだから。

核分裂現象の発見から、原子爆弾の開発、その使用、そして、冷戦下における抑止力。その巻、600ページを超え、登場人物のリストは250人を数える。Amazonから届いた時、これは「永久つんどく」かと思った。しかし、読み始めると、やめられなかった。読み終わってみると、少しも長くなかった。

魂を揺さぶられる1冊

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原子爆弾の原理、マンハッタン計画、ソ連のスパイ、第二次世界大戦の進捗、広島・長崎の被爆、大国の思惑などなど。むしろこれだけの話がよく1冊に収まったものだ。これまでに、何冊か原子爆弾についての本を読んだことはある。しかし、最近のドイツやソ連の秘密文書の公開も取り込んで書かれたこの本からみれば、どれもが、その一面を描いたものにすぎない。誰彼なく勧めたくなる、HONZ魂を揺さぶられる本だ。

しかし、内容がすごすぎて、レビューをどう書けばいいのか、よくわからない。

物語は、1938年、オットー・ハーンが核分裂反応を発見したことに始まる。その研究成果に基づいた思考実験から、核分裂を利用した原子爆弾の論理的可能性が明らかになる。

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