(新連載・第1回)条件が変わったのに考え方はもとのまま

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円安・金融緩和政策からの脱却が必要

企業がグローバルな観点から海外移転する動きは、震災前から進んでいた。図に見るように、海外設備投資は2010年夏から急増していたが、10~12月期の前年同期比は、45・7%増という驚異的な値になった。アジア地域は64・9%増だ。

この動きは円高によるものだが、震災による条件変化が海外移転を加速させるだろう。電力供給の不確実性のために輪番休業というような不自然な操業体制を強要すれば、国内での生産活動には大きな障害が出る。さらに今後、電力料金が上がり、復興投資によって金利が上がれば、国内での生産や投資はますます不利になる。また、こうした分散化はリスク対処のためにも必要である。

したがって、震災で損壊した生産設備を国内でなく海外に再建するのは、ごく当然の方向だ。また、海外のOEM(相手先メーカーによる生産)メーカーやファウンドリー(半導体チップの生産工場)への委託も増えるだろう。国内生産が減少して輸入を増加させることになれば、貿易収支の赤字は長期的に定着する。

ところで、輸入の重要性が増せば、為替レートは円高になったほうがよい。そのほうが安く買えるからである(正確にいえば、日本人が1時間働いて輸入できる財の量が増える。つまり日本人はより豊かになる)。

このこと自体はこれまでと変わらない。だが、これまでは輸出企業の利益が円高によって減ることから、「円高は望ましくない」という意見が支配的だった。

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