「100点なんて偉いね!」が子どもへの呪いになる訳 その「ほめ言葉」が子どもを縛ることになる

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たとえば、「運動がこんなにできるんだから、将来はオリンピック選手だね!」というメッセージも、子どもに対して必要以上にプレッシャーをかけてしまいかねない言葉です。トップが取れなかったときに心身が不安定な状態になり、不登校になってしまったケースもあります。

・脳の神経回路「こころの脳」

ところで、子どもの脳では、10歳を過ぎた頃からだんだんと、「からだの脳」(間脳・脳幹)と前頭葉をつなげる神経回路が構築されていきます。この神経回路が「こころの脳」です。

「からだの脳」は、人間が生きていくために必要な原始的な欲求や感情をつかさどる生命維持装置です。しかし、社会の中で他者とうまく生きていくためには、「からだの脳」から発せられる喜怒哀楽を、いつでも思いのままに表出させるわけにはいきません。そこで、「からだの脳」と前頭葉を神経回路でつなげることによって、自分が置かれている状況や他者との関係性を考慮に入れて、論理的な判断ができるようになっていくのです。

チカのケースの場合、この前頭葉と「からだの脳」との神経回路が構築されていないと考えられます。

前頭葉は、「おりこうさんの脳」(大脳新皮質)に何度も繰り返し入ってきた刺激、すなわちこれまでの経験や知識・記憶を基に、自分独自の考え方で判断できる脳です。しかし、チカの「おりこうさんの脳」には、「失敗しても大丈夫だ」という経験・記憶がまったく入っていませんでした。「100点を取ればほめてもらえる」という記憶しかないので、前頭葉はそれ以外のオプションに対して判断することができません。そのことが脳の構築を壊し、心身症状、ひいては不登校につながってしまったのです。

「ほめる」のではなく、「認める」ことが大切

このように、親が学校や塾での成績をほめてしまうことは、子どもの脳の正しい発達を阻害する要因になりかねません。しかし、多くの親は、子どもが小学校に入学した途端に成績を気にし始めます。生まれたときには、「健康に育ってくれればそれで十分」と思っていたはずなのに、成績という評価で、自分の子どもの立ち位置を相対的に判断し始めるのです。

しかし、親は、学校や塾での成績を測るモノサシを持つべきではありません。学校や塾での評価は絶対的なものではなく、環境によって変化しやすいもの。そして、親が口を出さなくても、子どもは学校で成績という評価にすでに十分にさらされています。

学校や塾のように、点数などの数値で「評価」するのではなく、日々の生活の中で子どもの成長を発見して「認める」のが親の役目です。

私たちは、脳科学の理論を深化させ、さらに一歩前に進めた考え方、「ペアレンティング・トレーニング」を提唱しています。そして「ペアレンティング・トレーニング」のなかで、「親はブレない軸を持つ」ということを重要な考えとしています。

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