M&Aに「失敗する企業」「成功する企業」の決定差 買収におけるもっとも重要なことは何か

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正論を言えば、その目的を最も達成しやすそうな企業を選べばよい。最も「M&A難易度」が低いものを選ぶのが賢明だろう。1社に固執して買収検討を進めてしまうよりも、複数の候補を持つことは、「1社に惚れ込まず、しっかり比較してから決められる」という点で健全だし、社内外のステークホルダーに説明責任も果たせる。

理想の相手を見つけるには手段は選ぶな

では、複数の「買いたい企業」候補を見つけるには、どうすればよいか?

それには、アプローチ方法として、「買いたい企業」の選定プロセスを複数持ち、使い分ければよい。私が提唱する1つの選定プロセスが「口説き型プロセス」である。自社の戦略として必要なパズルのピースを定義し、その要件に合致した企業をリストアップし、自ら口説いていくというもの。

『M&Aを失敗させない企業買収先「選定」の実務』(中央経済グループパブリッシング)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

そして、もう1つの選定プロセスが「持ち込まれ型プロセス」である。金融機関や仲介会社から売り案件の紹介を受け、自社の戦略とフィットしたものを見極め、仲介されるというもの。

あえて“結婚”の文脈でとらえれば、「口説き型プロセス」で買収するのは“恋愛結婚”、「持ち込まれ型プロセス」で買収するのは“お見合い結婚”に近いとも言える。数ある中から、理想の相手と出会い、結婚したければ、どちらの手段も持っておくに越したことはないだろう。それはM&Aにおいても同様。片方のアプローチ方法だけに拘ってしまうと、理想の企業と出会えないかもしれない。

ただし、それぞれの選定プロセスにおいて注意すべきことはある。たとえば、「口説き型プロセス」においては、要件をしっかりと定義しておかないと、理想の企業を探し出すことはできない。また、「持ち込まれ型プロセス」においては、持ち込んでくれる仲介者に対して、事前に要件を伝えておかないと、理想でも何でもない企業を勧められてしまうかもしれない。

これら2つの選定プロセスを正しく使いこなすことが、「相手選び」を成功させる、ひいてはM&Aを成功させるカギなのだ。

田中 大貴 M&A戦略コンサルタント、MAVIS PARTNERS プリンシパル

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たなか だいき / Daiki Tanaka

早稲田大学商学部卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社、その後、ジェネックスパートナーズ、マーバルパートナーズ(現PwCアドバイザリーのDeals Strategy部門)、ベイカレント・コンサルティングのM&A Strategy部門長を経て現職。一般社団法人ポストM&A研究会 代表理事、グロービス経営大学院にてファイナンス講師も務める。

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