各紙の虎番記者は、岡田彰布監督の言葉を標準語に翻訳することなく「現地語」でそのまま掲載してきた。
「まあ、でも結局ストライクなあ、そらなあ、ピッチャーによってだいぶ違うからのお。そら何とか今日なんかやろうとそら思てるけど、そらなあ。でもなあ、ストライクが来んかったらどうしようもないよな、おーん」
サンケイスポーツ
「西、アカンなあ、おーん。あんだけ初球、バンバン打たれるか。ちょっとわからんけどなあ」
こんな砕けた関西弁が、新聞紙面に連日掲載された。岡田彰布という野球人のキャラクターは、増幅された形で広く喧伝されたのだ。
そういうスポーツ新聞にとって「阪神日本一」は「干天の慈雨」になりそうだ。一般紙やテレビなどの報道で飽き足らない読者が、駅売りのスポーツ紙を購入している。そして、控え選手やOBたちのディープな発言や、記者たちの裏話などをむさぼるように読んでいる。こうした「阪神日本一特需」は一時的かもしれないが、スポーツ紙は少し元気になるかもしれない。
関西の私鉄沿線住民が仲良くなる?
筆者は日本シリーズの全7試合をスタンドから観戦したが、意外だったのが、あの猛々しい阪神ファンが、オリックスの選手のプレーに感心して、時々は拍手を送っていたことだ。
オリックスは大阪を本拠地とする球団であり、阪神ファンにとっても心やすい。オリックスの本拠地京セラドームと、阪神の本拠地甲子園球場は、阪神本線、阪神なんば線で一本でつながっている。阪神とオリックスのナイターの試合が重なると、帰りの電車は、阪神とオリックスのファンが一緒になるのだ。
他の地方の球団ではなく、同じ関西のオリックスとの対戦は、阪神ファンにとっても喜ばしいことではあった。
阪神が負けた試合でもタイガースのユニフォームを着たお客が「ええ試合やったな」と言うのをあちこちで聞いた。
第6戦、オリックスのエース、山本由伸が9回のマウンドに向かい、彼の登場曲「Frontier」が流れると、三塁側の多くの阪神ファンが「おおー」という感嘆の声を上げた。大エースの力投は、阪神ファンにも感動ものだったのだ。
かつては、阪急、阪神、南海、近鉄と関西の主要私鉄はそれぞれ球団を保有し、沿線住民はライバル心を持っていたが、阪急がオリックスに身売りし、南海はダイエーに身売りして福岡に去り(現ソフトバンク)、近鉄もオリックスと合併した。しかもかつては不倶戴天の間柄と言われた阪神電鉄と阪急電鉄は経営統合し、阪急阪神ホールディングスとなった。
今回の阪神、オリックスの「関西対決」は、風雪を経て生き残った「わしらのプロ野球チーム」同士の対戦だったのだ。負けたオリックスのファンも素直に阪神を讃えることができたし、阪神ファンもオリックスを「わりかし、やるやん」と評価できた。
関西の私鉄沿線の人々にとって、今回の日本シリーズは「関西は一つ」を確認することができる、誠に有意義な機会だったのではないか。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら