関西弁でお茶の間を賑わせる吉本興業や松竹芸能の芸人も、明石家さんま、ダウンタウンを筆頭に、東京の高級住宅地やタワーマンションに居を構え、関西には新幹線で出張してきている。2019年のM-1グランプリで優勝した「ミルクボーイ」が、東京に移住せず関西にとどまったことがニュースになったくらいで、関西弁をしゃべる人気タレントの多くが「東京人」になっているのだ。
江戸歌舞伎と並ぶ二大勢力の1つだった上方歌舞伎も、中村鴈治郎、片岡仁左衛門をはじめとする役者のほとんどは東京在住だ。関西での公演が少ないから仕方がないが、興行の世界でも関西、大阪は実質的に「地方」になっている。
「国際的イベント」のトラウマ
大阪人、関西人の自信をさらに萎ませそうになっているのが「大阪・関西万博」だ。
関西の中高年層は1970年の「大阪万博」を強烈に覚えている。新しい時代が始まりそうな期待感いっぱいで、大阪、千里の万博会場に通ったものだ。当時、小学生だった筆者は同級生と「万博に何回行ったか」「どのパビリオンに行ったか」を自慢し合ったものだ。
しかし、2025年の万博は、開催まで2年を切ってもまだ「本当に開催できるのかどうか、よくわからない」状況だ。聞こえてくるのは建設費の高騰の話と、責任のなすりつけ合いをする関係者の声ばかり。
実は大阪は「国際的イベント」では、トラウマを抱えている。2008年の夏季オリンピック開催を目指したが、早々に「選外」に近い扱いになっていたにもかかわらず招致活動を続けた。開催地発表の当日には、テレビで特別番組を組んだが、番組が放映された時点ですでに発表が終わっていて、司会の桂三枝(今の六代目桂文枝)が開口一番「もう決まってしまったみたいですねえ」と言う始末だった。
この時も準備不足、根回し不足が指摘された。また東京側のつれない態度も話題になったが、今回の万博も同様の空気が流れている。日本シリーズ中の球場でも「大阪・関西万博」のCMが流れたが、関西での盛り上がりはほとんど感じられない。
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