歴史的魅力ある街が観光振興で失敗する共通原因 失敗した事例はどれも似たようなものが多い

✎ 1 ✎ 2 ✎ 3
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

この事例は、全国の歴史的景観エリアで発生している。JTB総合研究所が2019年5月に実施した「『歴史的な建築物がある集落や町並み(重要伝統的建造物群保存地区)』での観光に関する調査」がある。これによると、歴史的な建築物がある集落や町並みの訪問経験は、各年代でバラツキはあるにしても、訪問を目的に旅行した経験が全体平均では約40%、「旅行したついでに訪れた」を含めると全世代で60%以上は訪問している。

この数字だけ見ると、年代による違いはあるとはいえ、やはり歴史的景観が観光において人をひきつける力を十分持っているのは間違いない。

問題は、来訪した観光客の行動である。次のグラフを見てほしい。

滞在時間は概ね4時間以内に収まっている

※外部配信先ではグラフを全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください

はっきりとわかるのは滞在時間の短さ。ほぼすべての年代で70%くらいが4時間以内の滞在となっている。宿泊に関してのレポートを見てみても全体の約68%が日帰り訪問で、約14%が近隣の観光地や温泉地と地区外に宿泊している。当該地区に宿泊した人は全体の約19%。当たり前のことだが、観光客の滞在時間と消費金額には強い相関がある。

つまり、Bさんの事例は歴史的景観で集客することには成功したが、消費につなげる展開で失敗したので、観光目的としては不満が残る結果になったということだ。何を当たり前のことを言っているんだ、と思う人もいるかもしれない。しかし、これは歴史文化の大きな特質の1つである。

歴史的景観の中で楽しめる消費活動が必要

歴史文化はコア・リソースであり、集客力を持っている。歴史的景観への訪問経験もそれを裏付けている。だが、歴史的景観だけでは見て終わってしまうことが多いので直接消費につながらない。

歴史的景観の中で楽しめる消費活動が必要なのだ。Bさんの事例でいうならば、訪問動機となるものと消費活動になるものを明確に分けて考えていけなかったことが失敗の原因だったといえる。

次ページ「地域の魅力」を見失わないように
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事