地域振興の決め手は唯一無二の「地元の歴史」 『ヒストリカル・ブランディング』久保健治氏に聞く

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『ヒストリカル・ ブランディング』著者の久保健治氏
[著者プロフィル]久保 健治(くぼ・けんじ)/ヒストリーデザイン代表取締役。1981年生まれ。創価大学大学院博士後期課程単位取得満期退学。修士(歴史学)。近代日本史料研究会、藤沢市史の史料編纂に従事後、東京工業大学特任講師、ソーシャルメディアマーケティング会社を経て、2016年当社設立。武蔵野大学・神田外語大学兼任講師。(撮影:梅谷秀司)
観光にもコモディティー化の危険は潜むという。自慢の地域産品やサービスも売れると見るや模倣され、安値競争に陥る。そのわなを回避し確かな競争力となりえるのが、模倣困難かつ希少性の高い、その土地だけの歴史文化だと著者は力説する。
『ヒストリカル・ブランディング 脱コモディティ化の地域ブランド論 』(久保 健治著/角川新書/1034円/256ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

──成功事例として北海道小樽をはじめ4地域を紹介しています。

江戸時代、交通・交易の要衝として道内最大の経済都市だった小樽は、国の札幌一極集中政策によって斜陽化した歴史があります。高度成長期、復興の一手として運河を埋め立て6車線の道路を造る計画が持ち上がった。すると市民から「運河がなきゃ小樽じゃない」と声が上がり、保存運動につながった。それが全国に発信され、むしろ域外の人々から運河のブランドとしての価値が認識されていくんですね。復興を探る中で札幌の背中を追うのでなく、自分たちの歴史景観である運河を用いた新たな産業・観光を創出した。古い倉庫を生かした景観を整え、漁で使っていた浮き玉をガラス工芸の形で現代的に変換するなど、小樽の新しい顔を生み出していきました。

歴史という地域固有の資源

──千葉県佐原は300年の歴史を持つ大祭を目玉に据えました。

無形価値の可視化に成功した例です。佐原の大祭自体が無形文化財で、人々は祭りという営みそのものを自分たちの文化財として経済価値に転換した。江戸よりすごいんだぞ!という“江戸優(まさ)り”の気風や、古文書を時間をかけて読み解き、商業振興で活用されてきた事実を掘り起こして、反対派市民と対話した。そうした無形のものを集大成して、祭りを唯一無二の地域ブランドに昇華させたのです。

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