歴史的魅力ある街が観光振興で失敗する共通原因 失敗した事例はどれも似たようなものが多い

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まず、Aさんは歴史的事象を見つけたというが、歴史は過去のことであるから、それが発生してからだいぶ時間が経過している。つまり、もし今回の歴史的事象が認知拡大させるだけで集客できるのであれば、すでになっている可能性が高いのだ。ツーリズム理論でいうと、流通最大化による認知拡大だけではうまくいかない状況だといえる。

Aさんの事例は、需要創出をしなければいけない状況で、単なる認知拡大というプロモーション施策を実施してしまったので失敗したといえる。やり方次第では、この歴史的事象によって需要創出ができるかもしれないのに、方法論で間違ってしまったのだ。

よくある事例②歴史的景観で観光客は来るが…

Bさんが住む地域では、歴史的景観が保存された状態で残っていたのだが、今まではそこまで観光振興には力を入れてこなかった。だが、少子高齢化の波は確実に迫ってきている。そのため、まちおこしとして観光振興に本格的に取り組むことになった。

いくつかの施設もリノベーションなどの整備を行い、プロモーションを地道に続けた結果、以前と比較すると多くの人が観光でまちに訪れるようになり、まちにも活気が蘇ったと皆で喜んでいた。

しかしながら、最初の興奮が冷めてみると、人はたくさん来るのだが、各商店の売り上げなどはそれほど上向きにはなっていなかった。団体バスもたくさん入ってくるし、人が来ているのは間違いない。ボランティアガイドの満足度も高いのだが……。

この状況を打開するために、芸能人を招いたイベント開催などにも力を入れてきたが、イベントがなければ結局元に戻ってしまう。まちのみんなはイベント疲れもあり、観光に対して批判的な声も上がり始めてしまった。

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