歴史的魅力ある街が観光振興で失敗する共通原因 失敗した事例はどれも似たようなものが多い

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まずこの場合、Aさんは興味深い「歴史的事象」を見つけたので、これを知ってもらえれば地域の新しい魅力につながるだろうと考えた。

この発想はよいのだが、観光という視点でいうと、それだけではもの足りない。なぜかというと、ここでAさんが認知拡大させているのは、単に知識だけだからだ。

「知識だけ」では訪問にはつながりにくい

新しい知識はもちろん知的満足感をもたらす。それによって、友人のように「面白いね」という感想にもなるだろう。しかしながら、「知識だけ」となると離れていても獲得できるし、知ってしまえば終わってしまうのだ。そうなると、訪問動機としては弱い。

また、オリジナルグッズを作ったという記述があるが、ここでは単に地域の特産品である酒升に名前を刻印したくらいのものになってしまっている。歴史的事象と酒升の関連性も存在していない。

坂本龍馬など、すでに全国的な知名度があり、一定のファンがついているような歴史的人物であれば問題はないかもしれない。だが、最近発信したばかりでは難しいだろう。そもそも、この歴史的事象に興味関心を持つ人が酒升を欲しいと思うのかどうかもわからない。

これはかなり極端な例にしているが、実際には似たような事例は多いかと思う。単独で集客力があるブランドに育てていくためには、時間がかかる。一朝一夕にはいかないという前提はあるが、この事例はこの実践方法で時間をかけてもうまくいかない可能性が高い。

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