「偽の環境配慮」と非難されないための企業戦略 カーボンクレジット活用上の留意点【後編】
これらの厳しい要件を満たした高品質クレジットは当然ながら高額だ。しかし、これがグローバルスタンダードなのだ。
ちまたには、排出枠1トン当たり1000円もしない民間クレジットも多く出回っている。しかし、これら安いクレジットを買って、安易に自社のカーボンニュートラルやネットゼロを宣言したり、カーボンニュートラル製品として宣伝したりすること自体がリスクになる。どうしてもクレジットを使いたいならば、グローバルスタンダードな基準を満たしたうえで高品質クレジットを購入すべきだ。
短中期の目標にはクレジットは使用不可
注意すべきことは、国連のネットゼロ提言やSBTiでは、2030年などの短期のCO2排出量削減目標達成には、カーボンクレジットによるオフセットは削減量としてのカウントは認められていない。なぜならば、それぞれの企業が自社の排出の大部分を自助努力で削減しなければ、パリ協定の目標である1.5度に気温上昇を抑えることはできないからだ。
産業によって異なるが、自社の排出量のおおよそ90%程度までは自力で削減することが求められる。そのうえで、2050年にネットゼロを実現する過程では、現在の技術では削減できない分野の排出が残る。そこで大気中からCO2を除去するといった革新的な技術開発の実用化が必要になる。
企業は自らの削減努力とともにこれらの新技術の開発などにも貢献することが求められる。これらは「バリューチェーンを超えた緩和(貢献アプローチ)」と呼ばれ、クレジットを超えた最先端の環境行動として推奨されていることも知っておこう。
2022年12月、消費者庁は生分解性プラスチック製品であると偽ったことについて、景品表示法違反(優良誤認)に当たるとして措置命令を出した。これは日本での初めてのグリーンウォッシュ摘発事例だが、欧米ではすでに規制化が進んでおり、グリーンウォッシュに対しては、罰金が科される(前編記事参照)。
グローバルマーケットを持つ企業はもちろんのこと、今後は、そうした企業のサプライチェーンに入る企業も意識を高める必要がある。特にカーボンニュートラル製品や自社のカーボンニュートラルを宣伝している企業は、早期にしっかり国際イニシアティブを調査して対応しよう。
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