「偽の環境配慮」と非難されないための企業戦略 カーボンクレジット活用上の留意点【後編】
その最たるものが、2022年末に国連のグテーレス事務総長が主導して専門家グループから発表されたネットゼロ提言書だろう。これはネットゼロを標榜した企業が守るべき10の要件を示している。
そのうえで民間クレジットに関して知っておくべき国際イニシアティブは2つある。
1つはイギリス政府などの主導で発足した「自主的炭素市場イニシアティブ」(VCMI)。これは温室効果ガス排出ネットゼロを主張したい企業のためのガイダンスであり、いわばクレジットの需要側の企業が守るべき基準だ。
もう1つが、マーク・カーニー元イングランド銀行総裁が立ち上げた「自主的炭素市場のための環境十全性評議会」(ICVCM)。こちらはネットゼロのために使ってよい高品質クレジットの要件を示しており、クレジット供給側の基準だ。
クレジットを使う前に満たすべき前提条件
国連ネットゼロ提言書を含めてこれらのイニシアティブは、世界の機関投資家が企業の評価に使う基礎的ガイダンスとなるので、グリーンウォッシュを避けたいと考える企業は必ず知っておくべきだ。
横文字の省略形ばかりでうんざりするかもしれないが、これらの国際イニシアティブは相互に関連している。カーボンクレジットによるオフセットも使ってカーボンニュートラルを実現したいと考えている企業は、これらの国際イニシアティブの示す基準を勉強してから取り組もう。
国連専門家グループによる提言書を含む、これら3つのイニシアティブが共通して強調していることを見ていこう。
クレジット需要側のガイダンスであるVCMIを例に取ると、ネットゼロを標榜する企業は、まず前提条件を満たさなければならない。
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