サステナビリティー国際基準、企業が知るべきこと 炭素会計支援パーセフォニ幹部に聞く「必要な戦略」

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炭素会計・管理支援サービス企業パーセフォニで最高グローバル政策責任者を務めるエミリー・ピアス氏。サステナビリティー基準に関する世界的動向に詳しい(撮影:梅谷秀司)
IFRS財団傘下の国際サステナビリティー基準審議会(ISSB)は2023年6月26日付で、脱炭素化への取り組みなど企業によるサステナビリティー関連の情報開示についての国際基準を最終決定し、公表した。
ISSB基準は2024年1月に発効し、世界規模で導入が進められていく見通しだ。今後、企業は二酸化炭素(CO2)など温室効果ガス(GHG)排出の状況やその削減目標達成のための戦略などの情報開示をISSB基準に基づいて義務付けられ、その取り組み内容の質を投資家や取引先企業などから厳しく問われるようになる。
アメリカ証券取引委員会(SEC)で気候関連情報の開示の取り組みに関与し、現在、炭素会計支援サービス企業パーセフォニ(アメリカ)で最高グローバル政策責任者を務めるエミリー・ピアス氏に、ISSB基準の意義と企業の対応のあり方についてインタビューした。

 

――東証プライム上場企業は、「気候関連財務情報開示タスクフォース」(TCFD)の提言に基づく気候関連情報の開示を事実上義務付けられ、2022年度決算から有価証券報告書での開示が始まりました。ISSB基準はTCFD開示との間にどのような共通点があり、どこが異なるのでしょうか。

公表されているISSB基準の内容を一読するとわかるように、ISSB基準はTCFD提言を基礎にしている。すなわち、TCFDフレームワークの4つの柱(ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標)はISSB基準でも同様だ。

20年以上にわたって温室効果ガス(GHG)排出量の算定・報告の“共通言語”となってきた「GHGプロトコル」(次ページ図参照)もISSB基準で中心的に用いられている。これまでTCFD報告に取り組んできた企業にとってISSB基準はなじみやすく、好位置からのスタートになる。

他方、今後は今までよりも財務報告にひも付いた形で、財務にどのようなインパクトを与えるかといった観点での情報をより詳細に開示することが求められる。具体的には、温室効果ガス排出量の開示については、より精緻なデータに基づく報告が必要になっていく。とくに製品の使用や投融資先のCO2排出などのスコープ3(サプライチェーンからの温室効果ガス排出)の開示が今後、義務化されていくことが、従来との最も大きな違いだ。

ISSB基準への準拠を求める国も

――ISSB基準への準拠という点での各国の動向について教えてください。

国によってペースは異なるが、ISSB基準に基づいて規制を設けようとする動きが見られる。

香港およびシンガポールの証券取引所では、上場の条件としてISSB開示を求める動きがあり、現在パブリックコメントを募集している。アフリカのいくつかの国もISSB準拠を進めている。ナイジェリアは世界で最も素早く対応しようとしている国の一つだ。

日本はイギリスと状況が似ている。もともとTCFD提言をベースとした情報開示が推奨されてきた。ISSB基準についても導入への検討が進められている。ヨーロッパ連合(EU)は独自の規制を持っているが、ISSB基準とは互換性がある。

アメリカではSECがTCFD提言を基に気候関連情報の開示の提案をしてきた。その意味ではISSBとはかなり親和性がある。

現在、アメリカではTCFDまたはSASB(サステナビリティー会計基準審議会)の基準に則り、任意ではあるが気候関連情報の開示をしている企業が多い。SECがISSBと同様のルールを提案・決定するかは現時点では未定だが、仮に開示規制の導入が遅れることがあったとしても、任意開示の流れは今後も続いていくだろう。

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