「偽の環境配慮」と非難されないための企業戦略 カーボンクレジット活用上の留意点【後編】
そして2つ目には、科学に沿った削減目標を持つことを承認するSBTi(Science Based Targets Initiative:科学に沿った目標設定イニシアティブ)がある。
SBTiでは企業の取り組みがパリ協定の目標に科学的に沿っているか評価し、承認するので、SBT認定を取得しておくと、機関投資家の評価も受けやすい。
この前提条件を満たしたうえで、ようやくカーボンクレジットの検討に入ることになる。その際、どんなクレジットを使ってよいかについては、ICVCMが発表している以下の10の要件がある。
中でも目を引くのが、持続可能な開発の要件で、クレジットを創出するプロジェクトがその地域の環境や人々に悪影響を及ぼさないことを担保しなければならない、という要件だ。
生物多様性との両立が重要
たとえば熱帯雨林の減少を防止するプロジェクトの開発者が、現地の先住民や地域社会に害を与えていないか、生物多様性や自然資源を損なっていないか、などの詳細な要件を満たさなければならない。
そもそも森林はCO2吸収の価値だけではなく、本来の生物多様性保全、現地の住民の暮らしを支える重要な自然資本である。これらの厳しい10の要件を満たす高い品質のクレジット(コア炭素原則〈CCP〉適格クレジットと呼ばれる予定)は2023年末から認証される予定だ。
CO2排出ネットゼロを標榜したい企業は、まず、科学に沿って設定した削減目標を自社の努力で達成するという前提条件を満たしたうえで、残りの排出量をこれらの高品質クレジットで相殺することができる。残りの排出量というのは、たとえば自らの2030年の削減目標が46%であるならば、46%までは自助努力で削減する必要があり、残っている54%の排出のことを言う。
46%の削減目標達成にはクレジットは使えないことに注意が必要だ。クレジットの需要側のガイドラインであるVCMIでは、残りの排出量の何%を相殺するかによって、プラチナ(100%以上)、ゴールド(60%以上)、シルバー(20%以上60%未満)というステータスが用意されている。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら