「廃業か自己破産か」経営者を悩ませる最大の問題 廃業するにも借入返済、廃棄工事のお金が必要
これは、経営者が「もう少し辛抱すれば業績が回復するだろう」と甘い見通しを持っていることもありますが、従業員や取引金融機関が事業継続を強く要望することも、大きな理由です。多くの経営者が、廃業に抵抗する圧力の大きさを指摘します。
「近く廃業したいと率直に従業員に打ち明けたところ、50代の従業員から『年金が出るようになる7年後まで、何とか廃業しないでほしい』と懇願されました」(愛知県・サービス業)
「メイン銀行に相談したら、支店長が出てきて『リスケ(返済予定の見直し)には応じる。利息さえ払ってくれれば不良債権の扱いにならないから、私が支店長をやっている間は、絶対に廃業しないように』と言い渡されました」(岡山県・製造業)
廃業を相談しても相手にしてもらえない
中川日出夫さん(65歳)は、父親の代から60年間続く文具卸の中川文喜堂(栃木県宇都宮市)を経営していましたが、昨年、裁判所に法的整理を申請しました。現在、会社と個人の両方で破産手続き中です。
数年前から中川さんは、業績不振を受けて廃業しようと考え始めました。当然、廃業は初めてのことなので、何からどう進めればいいのかわかりません。そこで、多くの関係者・専門家に相談しました。
まず、顧問税理士に相談しました。顧問税理士は、廃業を決めた後の税金のことは教えてくれましたが、廃業するべきかどうか、どう進めればよいのか、廃業後の生活はどうなるのか、といった点についてはアドバイスしてもらえませんでした。
メイン銀行に相談したところ、リスケを提案され、廃業しないように迫られました。そして、「いま廃業したら社長も自己破産だ。カードも使えなくなり悲惨な生活になるけど、それでもいいのか」と脅かされました。
ならば公的機関へと、国が設置する事業再生協議会やよろず支援拠点を訪ねました。事業再生協議会では、銀行出身の担当者が上から目線で事業再生に関する数字の話をするだけで、廃業についてのアドバイスはもらえませんでした。
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