「廃業か自己破産か」経営者を悩ませる最大の問題 廃業するにも借入返済、廃棄工事のお金が必要

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よろず支援拠点の担当者は、さらに冷淡でした。「おたくよりもっと経営状態が悪い会社でも頑張っている。中川さんはまだ若いんだから頑張りなさい」という一言で厄介払いしました。

いま中川さんは、「もっと早く廃業を決断していれば利害関係者への被害も大幅に少なくて済んだ。しかし、どこに相談をすればいいのか分からなかった」と振り返ります。そして、「廃業について経営者が相談できる国・自治体の体制づくりが重要」と力説しています。

国は廃業支援に及び腰

国は近年、中小企業の事業再生や事業承継を補助金・融資などで強力に支援しています。経営者が「事業を続けます」と言えば、湯水のように補助金・融資が受けられます。ところが、「廃業します」と口にした途端、冷淡な対応になります(「後継者不在で借金だけ残る『中小経営者』の苦境」参照)。

これは、国は中小企業基本法で中小企業の「多様で活力ある成長発展」(第3条)を目指しており、もう店じまいしようという中小企業は、政策支援の対象ではないからです。

この問題を中小企業庁の関係者に提起したところ、「いえ、2014年から全国によろず支援拠点を設置し、地域の支援機関と連携して廃業を含むすべての相談に対応しています」という返事でした。

ただ現実には、よろず支援拠点など支援機関は、「廃業支援」を支援メニューとして打ち出していません。弁護士・税理士などの専門家が廃業を決めた後の手続きをアドバイスするだけで、廃業の意思決定から実行、さらに廃業後の人生設計までを総合的に支援する体制になっていません。

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