後継者不在で借金だけ残る「中小経営者」の苦境 国は延命を支援しても廃業には手を差し伸べず

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日本の中小企業は事業継続が難しくなっている(写真:akiti/PIXTA)

いま、中小企業経営者にとって大きな課題になっているのが、事業承継です。後継者不在という経営者が多く、会社を他社に売却(以下「M&A」)してリタイアしようという動きが広がっています。

M&Aによって、事業をこの世に残し、従業員の雇用を守り、自身は売却収入を手にしてハッピー・リタイアメント。という成功例もありますが、うまく行かず、悲惨な老後に追い込まれてしまうケースも多々あります。

今回は、このところ隆盛を極めているM&A仲介ビジネスの問題点と経営者の対応を検討したうえで、廃業というあまり注目されていない大問題の実態を紹介します。

M&A仲介会社が猛烈な営業攻勢

最近、中小企業経営者とお話しすると、よく話題に上るのが、M&A仲介会社の営業攻勢です。とくに高齢で後継者不在の経営者は、M&A仲介会社から猛烈なアプローチを受けています。

「昨年、後継者に予定していた長男が事情により後を継げなくなりました。そのことが決まった翌月から、M&A仲介会社が立て続けに3社も営業にやってきました。長男の件は親族と顧問税理士にしか話していないので、どこから情報が漏れたのか。不気味です」(小売業経営・60代)

M&A仲介会社の営業担当者は、「御社では後継者がいないようですね」とは言わず、たいてい「御社を買いたいと希望している会社があります」と言って近づいてきます。しかし、本当に具体的な買収希望があるのでしょうか。

「相手の社名を尋ねたら、営業担当者は『守秘義務契約を締結した後で』と教えてくれない。契約を結んで会員登録しても、やはり教えてくれない。おそらく、買収を希望する会社なんてなくて、まず売り物を確保してから買い手を探そうという魂胆でしょう。半世紀も営んできた会社をセリのように売買しようというのは、不愉快です」(製造業経営・70代)

このように、M&A仲介会社に不信感・嫌悪感を持つ中小企業経営者が多いようです。ただ、宗教の勧誘と違って多くの中小企業経営者がとりあえず営業担当者の話を聞くのは、それだけM&A仲介会社を必要としているからでしょう。

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