後継者不在で借金だけ残る「中小経営者」の苦境 国は延命を支援しても廃業には手を差し伸べず

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ここで営業担当者は、X社の経営者には「高望みはいけません。おたくのようなオンボロ会社は、6千万円まで値下げしないと売れませんよ」、Y社の経営者には「お金をケチっちゃいけません。X社のような優良企業は8千万円は出さないと、買えませんよ」と強く迫ります。X社かY社(または両方)が納得すれば、6~8千万円で売買が成立します。

こうした押し買いに遭わないために、経営者はどうすれば良いのでしょうか。自ら企業価値評価を学び、価格の妥当性を判断するのは困難。中小企業庁が2020年に公表した「中小M&Aガイドライン」にもあるとおり、別の専門家にセカンドオピニオンを求めるのが得策です。

廃業を希望する経営者が急増

押し買いで会社を不当な安値で手放した経営者は、もちろん気の毒です。ただ、ともかく会社を手放しリタイアできたので、「勝ち組」と見ることもできます。それに対し、M&Aに至らず、廃業して会社を清算するしかないというケースが多くあります。

私事ですが、中小企業診断士である筆者の元に「廃業したい」という相談が今年に入って5月までで6件も来ています。筆者はM&Aや廃業を専門にしておらず、昨年まで廃業相談は年に1件あるかないかだったので、異常なハイペースです。

廃業相談が急増している理由は明らかです。コロナ対策で国は、中小企業にほぼ無条件でゼロゼロ融資(無利息・無担保の融資)を実行しました。据え置き期間が終わって昨年後半から返済が本格的に始まり、なんとか延命してきた中小企業が耐えられなくなっているのです。

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