「心理化」した職場の問題解決に不可欠な考え方 自前の理論よりも心理学的知見が効果的な理由

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世代間ギャップによって、若手のマネジメントに困っているケースを考えてみましょう。ここでのギャップは、仕事や働き方に関する考え方の違いであるとしましょう。

メンバーシップ型の雇用であれば、ギャップによる多少の摩擦があっても、一緒に仕事をする中で、自然にある程度の歩み寄りが期待できます。

短期的には、人間関係をベースとしたマネジメントだけに頼るのではなく、最低限必要な内容での情報伝達の齟齬が少なくなる方法を工夫することで、状況の改善が期待できるかもしれません。

ギャップがある状態でも会社にとどまることのメリット

ところが、ジョブ型の雇用が進んでくると、メンバーにとってはギャップを埋めるための我慢や努力をするよりも、それが小さい組織に移るほうが、効率的なのです。

その場合、ギャップを小さくすることよりも、ギャップがある状態でも会社にとどまることのメリットをどう作るかを考えることのほうが良いかもしれません。

以上に記したように、心理学は、あなたの職場や働き方にも活かすことができる便利なツールなのです。深く知ることで、キャリア形成や人間関係に役立てていただければと願っています。

今城 志保 リクルートマネジメントソリューションズ組織行動研究所 主幹研究員

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いましろ しほ / Shiho Imashiro

1988年京都大学教育学部卒業、リクルート入社。採用関連のテスト事業部門の独立とともに、リクルートマネジメントソリューションズに転籍。96年ニューヨーク大学にて産業組織心理学で修士号、2012年東京大学大学院人文社会系研究科社会心理学博士課程後期満期退学。博士(社会心理学)。現在は面接評価などの個人のアセスメントのほか、経験学習、高齢者就労、職場の心理的安全性など、多岐にわたる研究に従事。主な著書に『採用面接評価の科学』(白桃書房)、『人材開発研究大全』(共著、東京大学出版会)などがある。

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