DEAN&DELUCA上陸20年躍進の裏に見えた苦悩 「出店が早すぎてブランド本来の個性を出せなかった」

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――社員からしたら、自由に発想しなさいと言われ、いざ提案してみたら却下された。失敗するのが怖いという意識もあると思うのですが――。

横川:僕はそんなに怖くないですよ(笑)。それと、情報が氾濫していることも作用していると思うのですが、「わかったつもり」になって、そこから出られない人が時々いて、もったいないと感じます。

――具体的にどういうことですか?

横川:たとえば「D&Dってこういうブランド」と自分で決めて入社してくる新しいメンバーが時々いるのです。でも、人はわかっていないときのほうが、「ああでもない」「こうでもない」といろいろな発想を巡らせるのではないでしょうか。「わかったつもり」という枠組みをはずしたほうが、もっと成長できるのではと思い、そういうことも折に触れて話してきました。

“横川離れ”が起きている

――きめ細かい対応ですね。そういう努力が実ってきている実感は何かありますか?

横川:おかげさまで最近、いい感じになってきたと思います。自分で考えて実行していく。僕がちょっと寂しいと思うくらい“横川離れ”が起きています(笑)。

――素晴らしいですね。でも、そうやって社員が自由にやっていくことに対し、「それはちょっと違うのでは?」と感じることはないのですか?

横川:まったくないわけじゃないですが、「なるほど」と思うことが確実に増えているのは嬉しいです。それから最近、「旅するD&D」というプロジェクトをやっていますが、これも社内を元気にしています。

――どういうプロジェクトですか?

横川:地方にある百貨店の催事場で期間限定のD&Dショップを展開しているのです。やってみたら、地域の人も百貨店の人も喜んでくれる。お客さんが喜んでいる姿を見て社員たちも喜んでいる。

担当する社員を挙手制にしたところ、「自分の地元だから」「ぜひ、行ってみたい」と手を挙げる人が多いのです。1年間で26都市、年間10万人以上のお客様にお会いすることができており、今後も続けていくつもりです。

――最後に、これからのD&Dが目指す方向は?

横川:しっかりした店主がいて、その場で責任を持って店を切り盛りしている。店主が大切にしていることとやっていることが一致している。要は店が熱量を持っている。全国にわたる店が、すべてそうなってほしいと願っています。

――横川さんの持っている熱量が、それぞれの店で、それぞれのやり方で発揮されていく。そんなブランドになっていくと良いですね。外野で勝手に応援しています! 今日はどうもありがとうございました。

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川島 蓉子 ジャーナリスト

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かわしま ようこ / Yoko Kawashima

1961年新潟市生まれ。早稲田大学商学部卒業、文化服装学院マーチャンダイジング科修了後、伊藤忠ファッションシステム入社。同社取締役、ifs未来研究所所長などを歴任し、2021年退社。著書に『TSUTAYAの謎』『社長、そのデザインでは売れません!』(日経BP社)、『ビームス戦略』(PHP研究所)、『伊勢丹な人々』(日本経済新聞社)、『すいません、ほぼ日の経営。』『アパレルに未来はある』(日経BP社)、『未来のブランドのつくり方』(ポプラ社)など。1年365日、毎朝、午前3時起床で原稿を書く暮らしを20年来続けている。

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