DEAN&DELUCA上陸20年躍進の裏に見えた苦悩 「出店が早すぎてブランド本来の個性を出せなかった」

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――「等価」とは?

横川:ものごとの価値を測るとき、ともすると、世間からの評価が高い、高級である、歴史が深いといった物差しが使われがちですが、「等価」はそうではない。

もっとオープンでフラットな目線でものごとをとらえようという意思なのです。有名ブランドでなくても、歴史がなくても、お客様に豊かさや喜びを提供するものを届けていくのが、D&Dが目指す方向と言えます。

――でも、なぜ食に特化しているのですか。

横川:食は誰にとっても不可欠な存在であり、毎日の生活の柱をなしている。その意味でまさに「等価」で伝えることができる領域ととらえているのです。

“こだわりの逸品”を集めて「わかる人にだけわかればいい」という伝え方ではなく、僕らが見つけてきた豊かさや喜びを「バトンをきちんと渡しながら広く知らしめる」という伝え方でやっていきたいと考えています。

会社はひとつの船団

――先ほどのトークイベントや冊子も、“らしさ”を伝えるための活動ですよね。

横川:はい。うちは社員が800人、アルバイトを入れると2,000人くらいの規模になっていますが、僕は会社をひとつの船団ととらえているのです。小さかったり大きかったり、いろいろな形をした、進み方やパワーの違う船の群れが、同じ方角に向けて海を渡っていく。そんなイメージを持ってここまでやってきました。

方角さえ間違っていなければ、それぞれが自由な活動をやっていっていいのです。ただ一方で、組織としての統制も必要で、そのためのシステムや決まりごともあります。

横川正紀氏(撮影:梅谷秀司)

――自由と統制は、社員からすると矛盾していると感じる面もあります。

横川:要はバランスだと思うのですが、忘れてならないのは、システムや決まりごとは、あくまで人が生かされるため、個性が発揮されるためということです。“社員が安心して踊れるための舞台”と言っていいのかもしれません。だから、システムや決まりごとにとらわれ、「あれもやってはいけない、これもできない」とがんじがらめになってほしくないのです。

――社員に自由な発想を広げてほしいと思っているのに、なかなか上がってこないという悩みを、トップの方からよく聞きます。

横川:僕も長年にわたり、「横川さんはどう考えるのですか?」「次は何をするのですか?」と、“待ち”の姿勢で仕事をしている人に向け、「自分で判断してほしい」と思ってきたので、その悩み、よくわかります。

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