「D&D」の日本での展開を手がけたのは横川正紀さん。同氏はD&D以外に、「GEORGE’S」「CIBONE」「TODAY’S SPECIAL」など、さまざまなライフスタイルを提案するウェルカムグループの代表を務めている。
最初にお会いしたのは、2001年、「CIBONE」をオープンしたときのことだった。東京・青山にできた同店は、家具やインテリア雑貨をはじめ、ファッション、書籍などがセレクトされ、かっこいい空間に並べられている。仕掛け人である横川さんの話は、新しいものに向かうエネルギーに満ちていて、魅力的なキャラクターと感じた。その後も折に触れ、話を聞いてきたのである。
上陸20周年 D&D“らしさ”とは?
今年、D&Dは上陸して20周年を迎える。そこで改めて、ブランドの“らしさ”は何なのか、どこに向かっていこうとしているのかを聞きに行った。
――コロナ禍では、食の領域も困難に直面し、ブランドとして存続していくためにエネルギーを注がれたと思います。
横川:すべてが止まった最初の3カ月ほどは、どう対処し、向かっていこうかと、考えながら走る、走りながら実行している感がありました。
その過程で「家で食べる」「テイクアウトする」といったシーンに対応した新しいプロジェクトを興したり、強化したりといった努力を、社員と一緒に進めていったのです。今はそれが堅調に動いていて、割と良い成果を出しています。
――D&Dは、どのお店も賑わっているように見えますが、今後、この勢いでお店を広げていくのですか。
横川:一気にお店を増やしていくつもりはありません。それよりカタログの充実をはかったり、ECに力を入れたり、冷凍食品の分野を拡充するなど、D&Dというブランドを通した体験を深く広く提供していこうと考えています。というのも、コロナ禍の前、お店を増やし過ぎてうまくいかなかった経緯があって――。
――えっ、そうだったのですか? どんどんお店が増えているので絶好調だと思っていました。
横川:2013年から2018年までの5年間は、毎年5店舗くらい、多いときで8店舗ほどを出店していたのです。新規出店とは本来、「この街にどんな店が似合うだろう」と考え、作っていくのが理想形なのですが、出店数が増えてくると、じっくり考えて個性を出すのが難しくなってくる。
人材の育成にしても、教育プログラムに力を入れたにもかかわらず、その本質が伝わらず、表面的なノウハウを伝えるレベルに終始してしまう。このままでは、ブランド本来の良さや、僕が抱いている志がかたちになっていかないと反省し、出店スピードを控えて、抜本的な見直しをはかったのです。
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