IBMを辞めた彼女が「医師」の道に導かれたきっかけ 教員を目指すも「三度目の正直」で見つけた天職

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杉原さんはIBM時代に培われた人脈を大切にする考え方をずっと持ち続け、学会や勉強会に積極的に参加した。以前からつねに興味があったのは、人の心。

専門の診療科をどうするかに関しては最後まで救急科と迷ったが、ほかの科とも密接に連携を取り、さまざまな患者さんを診療できる点に惹かれ、最終的に精神科を選んだ。生まれたときから母の弁膜症に付き合ってきた経験も踏まえ、「身体の病気や障害を持つ人の心も支えたい」という気持ちも志望理由につながった。

2010年3月に山梨大学医学部を卒業。慶應義塾大学病院で初期研修を終えたのち、同院ほか、東京医療センター(東京都目黒区)や久里浜医療センター(神奈川県横須賀市)などで勤務。

2022年には東京・自由が丘に「まさこ心のクリニック自由が丘」を開業した。「心のかかりつけ医」をキャッチフレーズに心療内科・精神科を標榜し、アルコールをはじめとするさまざまな依存症の診療、そして心のケア全般を行っている。

アウトサイダーの視点を持ち続けたい

小さなクリニックの存在が果たす役割は大きいと実感している。「開業して始めて知ったんですが、大きい病院を受診するより、クリニックはハードルがかなり低いみたいです」。いずれは往診も手掛け、家から出られない患者さんに家から出てもらうサポート(アウトリーチ)も行いたいと考えている。

自身のクリニックを開けるのは週3日だけ。残りの平日2日は、東京医療センターと久里浜医療センターで診療を続けている。

理由は2つある。まず、クリニックの患者さんをこれらの病院へ紹介するときも退院後の通院再開のときも密に連携を取れること。「例えばアルコール依存症の患者さんを、久里浜医療センターなどへ紹介することがよくあるのですが、私が週1回会いに行けるというと、患者さんもご家族も安心して入院を決められるようです」。

もう一つは自身の視野が狭くならないため。「複数のほかの病院に出入りしていると新しい情報に触れやすいですし、同僚や患者さんたちとの何気ない会話の中から学ぶことが多いんです」。

杉原医師をイメージしたイラストが迎えてくれる、クリニックの入り口(写真:筆者撮影)

逆に杉原さんのクリニックに、ほかの病院の医師や学生などが研修に来たいというときは積極的に受け入れている。

「ほかの職業にも言えることだと思いますが、専門性を持ちつつ、幅広い能力やネットワークも持っていたいんです」。これを杉原さんは、「山頂と裾野」と表現する。

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