「国立大学院卒・手取り月11万円」、40代男性の現実 副業はパン工場「身体も心も限界です」非正規公務員
今年になって始めたのが、近所のパン工場での副業だった。主に夜勤で、月5日から10日働く。時給は県の最低賃金の900円で、月5万~8万円の収入がある。こうして何とか生活できているが、疲労が蓄積しひざを痛めたという。
しかも、介護はまったくの未経験。入居者のおむつ替えや入浴など慣れない仕事に手間取っていると、年下の正規職員から「使い物にならないので、やめてくれ」とパワハラも受ける。
「身体も心も限界です」
何とか正社員の仕事に就きたい男性は、就職氷河期世代を対象とした公務員の正規職員の採用試験を受けている。昨年は最終面接までいったが、不合格だった。今年も10月に挑戦する予定だ。男性は言う。
「私のような就職氷河期世代は『負け組』といわれます。再チャレンジできるようなシステムをつくっていただきたい」
非正規の地方公務員は、全国に約113万人
男性のような非正規の地方公務員は、総務省の調査で全国に約113万人いる。国は2020年、非正規の地方公務員に賞与を出すなど待遇改善を図るとして、会計年度任用職員制度を導入した。
だが、非正規公務員の待遇改善に取り組む「公務非正規女性全国ネットワーク(はむねっと)」共同代表の瀬山紀子さんは、非正規公務員が置かれた状況は「明らかに不安定になった」と指摘する。
「会計年度任用職員制度の導入以前は、単年度ごとの契約更新であっても、長期にわたり働くことができた自治体も少なくありませんでした。しかし制度がはじまり、1年ごとの雇用が全国的に厳格化されたと言え、雇用がより不安定化しました」
そして収入は「不安定なまま」(瀬山さん)。はむねっとが2022年に行った調査では、回答した705件のうち、2021年の就労収入が200万円未満は53%に上った。瀬山さんによれば、制度導入と同時に時給や労働時間を引き下げた自治体が多く、収入増につながっていないという。
「こうした状況下で、仕事を掛け持ちせざるをえない非正規公務員はかなりいると思います。低収入のうえ、いつ切られるかわからない不安定雇用では、不安は大きく心身が疲弊し、未来も見えずにやめていく人は少なくありません」(瀬山さん)