「国立大学院卒・手取り月11万円」、40代男性の現実 副業はパン工場「身体も心も限界です」非正規公務員
西日本の高校で、美術の非正規教員として働く40代の男性も、漠然とした将来への不安と背中合わせで暮らしている。
「使い捨て公務員です」
大学で絵画を専攻し、絵を追求したいとの思いから、比較的自由が利く非正規教員として働くようになった。
給与は1コマ約2800円。1つの学校で週に平均6コマを担当する。3つの学校を掛け持ちするが、年収は合わせて200万円いくかいかないか。多いときは学習塾など3つの副業を掛け持ちしていたが、体調を壊し、いまは教育関係の副業1つに絞っている。収入は年60万~70万円ほどだという。
不安は収入だけではない。体を壊して働けなくなっても、雇用保険が適用されない。さらに、給与は授業のコマ数に応じて支給されるが、授業が終わった後の部屋の片づけや生徒の成績評価を無給でさせられるなど、理不尽なことも少なくない。そして、何より心配なのが、先のことだ。
契約は単年度ごとなので、いつ「雇い止め」になるかわからない。しかも、1校で契約を更新されなかったら、残り2校の収入だけではとても生活できない。いつも年度末になると、来年はどうなるか不安になる。
不当に買いたたかれている非正規公務員
将来を描くことができますか──。そう問うと男性は言った。
「まったく描くことができません」
はむねっとの瀬山さんは、現状を変えるには「賃金格差の是正と、雇用年限の廃止の2つの対策が必要」と説く。
「非正規公務員は不当に買いたたかれています。仕事を掛け持ちしなくていいように、正規と非正規との賃金格差をなくすこと。そして、単年度雇用を廃止し、安心して働ける職場環境を築くことが重要です。継続して質のいい公共サービスを提供するためには、働き手が安心して働ける環境が重要です」
『「副業」の研究』の著書もある東洋大学の川上淳之(あつし)教授(労働経済学)は言う。
「副業をすれば何とかなるという生活は、決して望ましい解決策ではありません。長期的に1つの仕事で安定した収入を得られるよう、生活面も含めた環境整備や社会福祉政策の実施が求められます」
(編集部・野村昌二)
※AERA 2023年10月2日号より抜粋
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