うっかり「百億円の新規事業」を潰す大企業の論理 図を描いて経営を考えることで見えてくるもの

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このように、単に事業の現在の規模だけでなく、時間軸を追加して面積図を作ると、ものの見方が変わってきます。つまり、複数の視点を図に入れ込むと、問題の「枠」が広がり、問題そのものを「いじる」ことができるようになるのです。

その比較は「アップル・トウ・アップル」か?

ではこのケースでは、どうすればよかったのでしょうか? 図的に考えると話はシンプルです。

見えていなかったものは、新規事業の未来の「フルポテンシャル」だったのですから、本来ギリギリと知恵を絞るべきポイントは、現在の新規事業の四角形の広がりであり、今の新規事業の外側を可視化することです。将来の拡大可能性でもいいし、この事業の隣接領域への発展形でもいいので、魅力ある(絵空事ではない)フルポテンシャルをきっちりと示すことが肝要だったということです。

(著者作成)

ついつい私たちは現時点でハッキリと見える新規事業の四角形に意識がいきがちです。しかし、本当のアップル・トゥー・アップルの比較は、既存事業と新規事業のフルポテンシャルの比較だったということです。

新規事業の育成のためには、着眼大局・着手小局が必須です。事業成功のための内なる論理はしっかりと詰めたうえで、対社内では風呂敷を広げ、手練手管を使ってでも、将来のフルポテンシャルを見せて納得させる。こういった覚悟と努力も必要でしょう。

そして経営陣には、既存事業の「今」と、新規事業の「未来」のトレード・オフにきっちりと直面してもらうのです。これは、既存のA事業とB事業を比較するよりはるかに難しい課題です。

おぼろげな「未来」と、ハッキリしている「今」という時間軸を跨いだトレード・オフ、これこそが経営にとって本質的なアップル・トゥー・アップルであり、意思決定の難しさの根幹です。

平井 孝志 筑波大学大学院ビジネスサイエンス系教授

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ひらい たかし / Takashi Hirai

東京大学教養学部卒、同大学院理学系研究科修士課程修了。マサチューセッツ工科大学(MIT)MBA。早稲田大学より博士(学術)。ベイン・アンド・カンパニー、デル(法人マーケティング・ディレクター)、スターバックス(経営企画部門長)、ローランド・ベルガー(執行役員シニアパートナー)などを経て現職。コンサルタント時代には、電機、消費財、自動車など幅広いクライアントにおいて、全社戦略、事業戦略、新規事業開発の立案および実施を支援。現在は、経営戦略、ロジカル・シンキングなどの企業研修も手掛ける。早稲田大学経営管理研究科客員教授、キトー社外取締役、三井倉庫ホールディングス社外取締役。著書は『本質思考』他多数。

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