そうした水素先進都市の強みを生かして、2013年に国・県・民間事業者・学識経験者らによる「周南市水素利活用協議会」を設置。翌2014年には「周南市水素利活用構想」を発表している。
そして、当面の達成目標年を2030年と定め、第1期と第2期の水素利活用計画を策定し、各種の施策を推進してきた。基本目標は、次の3点だ。
・水素の利活用による低炭素・省エネ・災害に強いまちづくりの推進
・水素関連ビジネスの創出と市内企業の連携・競争力の強化
現行の第2期では、ステップ1(2015~2017度)、ステップ2(2018~2020年度)、そしてステップ3(2021~2023年度)の3段階で進めている。
だが、ステップ3の現時点で、燃料電池車の普及台数は目標の200台に遠く及ばない38台(2022年実績)にとどまっているのが実状だ。
普及がスピードアップしていない背景について、「(他の次世代車と比べて)価格が高いこと、車種が限定的なこと、水素インフラが市内に1カ所のみであること」といった、燃料電池車が抱える典型的ともいえる課題を指摘した。
また、各種の実証実験は国の補助事業であり、過去に市内に設置した水素関連施設の一部は撤去されている。市としては、燃料電池車の水素燃料に対する補助などを行っているが、水素関連施策の全体として見れば市の予算は限定的だ。
関心は高まり小学校の社会科見学の対象に
こうしたこれまでの経緯を見ると、市民レベルでの本格的な水素の利活用については、まだ時間を要すると見られる。
それでも多くの周南市民は、コンビナートを基盤とする各種産業が市民生活を支えていることを理解しており、各種の報道や市の普及啓発活動によって、「わが町が水素先進都市であること」を十分、認識しているという。例えば、小学校の社会科見学に水素関連施設が含まれることがあり、市外の小学校からも見学があるそうだ。
また、以前に実施していた環境省事業の実施期間中ほどではないようだが、国がGX戦略を打ち出したあと、各方面から水素先進都市・周南市への関心は高まっていると、市は認識。人材育成や新な企業誘致に向けた各方面との会合も、継続して実施しているところだ。
その他、変わり種としては、水素が入った周南市の地酒が販売されている。創業200年の酒蔵「はつもみぢ」とトクヤマが共同開発した、「水素晒(すいそさらし)」だ。
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