「水素の町」を構想する福島・浪江町の理想と現実 震災復興の住民は割高コストを受け入れるのか
復興道半ばの町で急速に進む「水素タウン構想」
「東京都は2024年度に水素関連予算を前年度から(200億円に)倍増した。需要と供給の両面で社会実装を進めて、未来を力強く引き寄せたい」
3月27日、東京・晴海で行われたENEOSの水素ステーションの開所式で来賓の小池百合子東京都知事は胸を張った。東京五輪の選手村跡地に建てられたこの水素ステーションでは、併設の大型水素製造装置で都市ガスから毎時300N㎥の水素ガスが生産される。
このステーションでは、水素ガス1kgあたり2000円で販売されるほか、全国初となるパイプラインによる供給で、街区内のマンションや商業施設の燃料電池に水素が送られる。マンションでは共用部の照明やエレベーターの電力の数%を賄うという。
車両向けの水素供給事業を担うENEOSの藤山優一郎常務は、式典で「エネルギーとモビリティを支える拠点に育てていく」と力を込めた。
ただ、水素ステーションは全国で着々と増えてはいるものの、まだ稼働は160カ所程度。2030年に1000カ所の政府目標は絵に描いた餅だ。
華々しい開所式が開かれた東京から270km余りの福島県浪江町。福島第一原発から最短4kmに位置し、原発事故で居住人口は激減。震災前の10分の1、2162人になった(2024年1月現在)。いまだ8割の土地は帰還困難区域で人が住むことができない。
そんな復興道半ばの町で、いま急速に進んでいるのが「水素タウン構想」だ。
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