脳科学者が現代人に「モハメド・アリ集中法」推す訳 集中するだけでなく「いかに離れるか」も重要

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「脳内ToDoリスト!? 自分にはとても無理!?」

そう思った方もいるかもしれませんね。でも、私はこれを単なる“慣れ”の問題だと考えています。

そこでまずは、1日の仕事を始めるときに「何にどれくらい時間を振り分けるか」、その日の仕事を見通すトレーニングをしてみましょう。重要なのは、状況を読みながら瞬時に「一番重要なこと」に目を向ける判断力であり、つねに頭の中で「ToDoリストの中身」を変化させていくことが肝要です。

1日の仕事の流れを頭の中でイメージしながら、自分自身と対話して、「この仕事は本当にすぐやるべきか」などと、脳内で段取りのイメージをつかんでおくことで、今やるべきことが見えてくるはずです。

このように、1日の仕事を臨機応変に、かつダイナミックに変えるためのトレーニングをしていくことで、瞬間的な集中力に磨きがかかるというわけです。

脳内ToDoリストで「隙間時間」を明確化する

頭の中でToDoリストを整理していくと、未来の行動にいろいろな可能性が広がっていきます。

『運動脳の鍛え方』(リベラル社)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

皆さんも一度やってみるとわかると思うのですが、脳内ToDoリストを活用していると、朝起きてから夜寝るまで、いかに自分のスケジュールが隙間だらけかということに気がつくはずです。

つまり、時間活用の可能性が大きく広がってくるのです。

そして、脳内で柔らかいToDoリストの構築がうまくなってくると、何かに集中していても次にやるべきことに気がつくようになり、その場からぱっと離れられるようになってきます。

どんな事態が起こってもスムーズに次の集中に移れるようになる。これこそがモハメド・アリ集中法の効果なのです。

茂木 健一郎 脳科学者

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もぎ けんいちろう / Kenichiro Mogi

1962年東京生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、同大学大学院理学系研究科物理学専攻課程修了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を経て現職。「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとして脳と心の関係を研究するとともに、文藝評論、美術評論などにも取り組む。2006年1月~2010年3月、NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」キャスター。『脳と仮想』(小林秀雄賞)、『今、ここからすべての場所へ』(桑原武夫学芸賞)、『脳とクオリア』など著書多数。

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