「天皇」林野vs「王子」中野、セゾン投信巡る愛憎劇 なぜ60歳会長は81歳会長に解任されたのか?

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少しずつ溝が深まっていった両者。いつしか親会社は「新しいビジネスモデルには経営体制も刷新するほうがいい」(水野克己・クレディセゾン社長)との結論に至ったのである。

思い起こせば、新卒で旧西武クレジットに入社後、一時はセゾングループ内でほされていた中野氏を引っ張り出し、2006年のセゾン投信設立で全面的に協力したのは、当時の林野氏である。林野氏は中野氏からの手紙を読み、「面白い」と感じ、すぐ本人に電話。「顧客本位」「長期投資」の考え方に共鳴し、セゾン投信による5回もの増資の場面も後押しした。

それから途中で小さな食い違いはあっても、決定的な喧嘩は回避してきたつもりだった。

将来、セゾン投信の売却はありうるか?

ゼロから運用資産6000億円以上、顧客数15万口座までセゾン投信を成長させたのは、紛れもなく中野氏の経営手腕である。それも一歩ずつじっくりとした歩みで、単独黒字には8年間、累損一掃までには10年間以上もかかったほど。確かに林野、中野の両氏は、ある時点まで同じ方向を向いていたはずである。

実は取締役会での退任決定前、中野氏はクレディセゾンの持つセゾン投信株の売却相手を探していたふしがある。セゾン投信のバリュエーション(企業価値評価)は推定で数百億円台。今は無理でも、将来のクレディセゾンの経営陣からすれば、セゾン投信の売却がまったく絵空事とはいい切れまい。

いずれにしても一連の退任劇は残念でならない。今回は林野氏にも取材を申し込んだものの、残念ながら実現しなかった。

2人が再び元のサヤに戻るのは難しいだろう。来るべく新NISAの時代、セゾン投信、なかのアセットともに、健全なる競争でともに発展していってもらいたいものだ。

大野 和幸 東洋経済 記者

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おおの かずゆき / Kazuyuki Ohno

ITや金融、自動車、エネルギーなどの業界を担当し、関連記事を執筆。資産運用や相続、年金、介護など高齢化社会に関するテーマでも、広く編集を手掛ける。大野和幸(X)

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