「おばあちゃんカフェ」で働く女性が見つけた幸せ シニア女性が活躍する事業に世界も注目

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焼くのが簡単でないため、現代のガストロノミーからはほとんど姿を消してしまったが、フォルペンションはこの料理を再びはやらせた。ブフテルンはカフェに常備されており、企業ではイベント用におばあちゃん付きの移動式ブフテルカフェ(Buchtel-to-Go)をレンタルすることもできる。取材中、素敵な女性が私にブフテルンを振る舞ってくれた。30年ぶりに食べたその味の懐かしくて、おいしかったこと!

ブフテル・ステーション
移動ブフテルカフェ(写真:フォルペンション提供)

パンデミックをきっかけに、社会的企業のイノベーションが急増し、それは現在も続いている。とはいえ、フォルペンションを含むソーシャル・ビジネスには、つねに収益性の問題がつきまとう。

「私たちのカフェの価格は、ほかよりも高いのです。私たちは本当にすべてのケーキを自分たちで、その場で作っているので」とホーラーは言う。「私たちは消費者にこのことを詳しく説明しなければなりませんが、誰もが高価格に理解を示すわけではありません」。こうした中、フォルペンションはイベントやコラボレーションなども通じて、さまざまな価格を試している。

こうしたチャレンジに直面しているものの、高齢者の孤立を防ぎ、社会とのつながりを確立しているという点で、フォルペンションは大きく成功していると言っていいだろう。

フォルペンションは多世代が集う場所になっている(写真:フォルペンション提供)

日本でも通用するビジネスモデル

フォルペンションは、過ぎ去った時代の居心地のいいカフェの魔法を蘇らせただけでなく、日本の社会的企業のモデルとなるような刺激的なビジネスモデルも生み出した。

世代を超えたコミュニティ、質の高い職人技、社会的コミットメントというユニークな組み合わせにより、フォルペンションは、カフェがたんにコーヒーとケーキを楽しむ場所である必要はなく、社会的統合と支援のプラットフォームにもなりうること、そして社会的企業がいかに世界を変えることができるかの生きた見本にもなりうることを証明した。

世代を超えた経営コンセプトは、高齢者の孤立が問題となっている日本でも世代間の懸け橋となりうるのではないだろうか。

パリッサ・ハギリアン 上智大学教授(国際教養学部)

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Parissa Haghirian

オーストリア・グラーツ生まれ。ウィーン大学日本学部卒業。ウィーン経済大学国際ビジネス学部で博士号取得。2004年に来日し、九州産業大学で国際ビジネスを教え始める。2006年、上智大学に准教授として着任。現在は、上智大学国際教養学部教授(国際経営・経済学コース)として、日本の経営学、クロスカルチャー、経営戦略などをテーマに研究・教育活動を続けている。

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