「おばあちゃんカフェ」で働く女性が見つけた幸せ シニア女性が活躍する事業に世界も注目

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オーストリア人の起業家、モリッツ・ピフル=ペルチェヴィッチ氏とマイク・ランナー氏もまた、大都市で懐かしの料理を見つけるのが難しいと感じていた。彼らは私と同じように、30年ほど前に田舎からウィーンに移住した。彼らはウィーンには故郷で食べたような味のお菓子がないだけでなく、ウィーンでは異なる世代間の交流がほとんどないことにも気がついた。

おばあちゃんは今でも最高のお菓子を作ってくれるーー。この点で2人の意見は一致している。「オーストリアでは、おばあちゃんがいつも手作りのお菓子を作ってくれるんだ」と、創業者の1人、ピフル=ペルチェヴィッチ氏は言う。「私たちが恋しかったのは、おばあちゃんのお菓子から生まれる感動だったのです」。

店名に込めた「思い」

すでに起業家だった彼らが、おばあちゃんの手作りケーキでカフェを開くというアイデアを具体化するのには時間はかからなかった。シニアの女性を雇ってケーキを焼いてもらい、それをカフェで提供する、というアイデアは2012年、ウィーン・デザイン・ウィーク2012でのポップアップ・カフェという形で初めて実現した。

フォルペンションではさまざまな「懐かしの味」が提供されている(写真:フォルペンション提供)

「最初のおばあちゃんたちを見つけるのは簡単ではありませんでした。スーパーマーケットに最初の告知を出しましたが、反応はありませんでした。その後、オーストリアの大きな新聞の求人ページに広告を出したら、最初の応募が来たんです」とモリッツ氏は話す。「オーストリアには、年金に加えて、仕事を探している高齢女性がたくさんいることも明らかになりました」。

初のポップアップ以降も、「グランマ・ポップアップ・カフェ」は、古いフォルクスワーゲン・バスを使い、ウィーン観光局とも協力してオーストリア全土を回っていた。ケーキはどこでもすぐに売り切れた。この成功が原動力となり、長い場所探しの末、ほかの仲間も集めて2014年にウィーンに最初のカフェ「Vollpension(フォルペンション)」が設立された。

モバイルカフェも展開(写真:フォルペンション提供)

Vollpensionという名前はよく選んだものだ。Vollpensionという言葉は、「full」と「pension」からできている。ペンションはオーストリア語で年金(退職)を意味するが、民宿にも使われる。Vollpensionは「年金満額」という意味と、「民宿で朝昼晩の食事が完全に提供される」という意味があり、このカフェにはぴったりの名前だ。

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