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「男性乳がん」知っておきたい遺伝性がんとの関係 専門の検査やカウンセリングが保険適用に

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ちなみに、卵巣・卵管に関しては、摘出をすると死亡リスクを下げることが明らかになっているため、日本婦人科腫瘍学会の『卵巣がん・卵管癌・腹膜癌治療ガイドライン(2020)』では、卵巣がん発症リスクが高まる40歳ごろに向けて妊娠や出産の希望がなければ、未発症者でも卵巣・卵管をすべて摘出することを強く推奨している。

こちらも自費で、卵巣と卵管の両方を切除すると「だいたい80万円」(大住医師)という。

四国がんセンターで実施している遺伝カウンセリングの件数は、現在は月20~30件。遺伝子検査に健康保険が適用になってから「ぐんと増えた」(大住医師)。遺伝カウンセリングでは遺伝カウンセラーが患者の話を聞き、不安が強い場合には、臨床心理士による専門的な診療を受けることも可能だ。

2020年に遺伝子検査などで健康保険の適用が実現したのは、長年、がん患者団体や日本乳癌学会が声を上げてきたからだ。

とはいえ、ハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが両側の乳房切除と、卵巣卵管のリスク低減手術を受けたことを公表したように、予防的な両側乳房切除、卵巣卵管切除といった考え方が広まっている欧米と比べると、遺伝子情報を生かした診療体制は日本ではまだ遅れているのが実情だ。

アメリカでは2008年に本人や家族の遺伝子検査結果に基づく健康保険の加入制限、採用・昇進の不利な取り扱いといった差別を禁止した法律を制定しているが、日本ではそうした動きもない。HBOCの診療体制も、東京以外はまだ十分とはいえないという。

HBOCの診療はまだまだ不十分

遺伝子情報を生かした診療体制を整えるための一番大きなハードルは、「日本では病気にかからなければ、健康保険が適用されないこと」だと大住医師は指摘する。

遺伝性のがんに詳しい大住省三医師(写真:本人提供)

大住医師は約20年間、遺伝子検査などの保険が通らなかった状況を歯がゆく思ってきた。検査が保険で受けられるようになったことを評価するが、まだまだサポート体制は不十分だという。

「未発症の方の診療を保険で認めるということは、日本の保険制度を根本的に変えないと難しいが、それでも以前に比べれば大きく進歩していると思う。今後も国会議員をはじめ、多くの人にもっと関心を持ってもらい、実現させたい」と抱負を語った。

そうした意味でも今回、ブラザー・コーンさんが男性乳がんを患ったことを公表したことは、大きな一歩なのかもしれない。

大住省三医師
松山市民病院顧問
1957年、徳島市生まれ。1982年、岡山大学医学部卒。岡山大学大学院(病理学)卒業後、1986年、岡山大学医学部第2外科入局。国立岡山病院外科、愛媛県立伊予三島病院外科、米国スタンフォード大学(病理学)留学などを経て、1993年から国立病院四国がんセンター(現・独立行政法人国立病院機構四国がんセンター)外科。乳腺外科医長、がん診断・治療開発部長などを務めた。2023年4月より現職。専門領域は乳がんの早期診断、縮小手術、遺伝性腫瘍。日本乳癌検診学会評議員、日本遺伝性腫瘍学会理事。

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