「男性乳がん」知っておきたい遺伝性がんとの関係 専門の検査やカウンセリングが保険適用に

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乳がんは乳房内の乳腺という組織から発生するが、実は男性にも乳腺の組織はある。そして、男性乳がんの場合、診断された時点でやや進行していることが多いといわれる。

「乳腺の量は女性と比べて圧倒的に少ないですから、しこりがあれば、自分で触ればすぐわかる。しかし、それが“乳がんかもしれない”と思う人は少ないので、様子を見ているうちに大きくなってしまうことが多いのではないか。乳がん検診が男性にはないのも理由でしょう」と大住医師。

男性乳がんを早期に発見するためには、男性も時々、入浴の際などに鏡で自分の胸の形を見たり、異常がないかなどを触って確認したりすることが大切だ。異変を感じたら、「来づらいかもしれませんが、乳腺外科に来てください」(大住医師)。

男性乳がんの診断は、超音波検査やマンモグラフィ(乳房レントゲン撮影)、検体を調べる組織診などが行われる。

治療は、がんの進行の程度によって異なるが、基本的には女性の乳がんと同様、完全切除が可能なら外科手術を試み、必要に応じて薬物治療(抗がん剤やホルモン療法薬など)や、放射線治療と組み合わせる。

家族歴があるとリスクは2倍

ところで、男性乳がんの危険因子の1つが家族歴だ。

前出の希少がんセンターによると、乳がんや卵巣がんになったことがある近親者(父母、兄弟姉妹、子ども、祖父母など)が1人以上いる男性は、そうではない男性と比べて乳がんを発症するリスクは2倍になるという。

近親者にも乳がん患者がいる場合、「遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)」の可能性が高い。

HBOCとは、遺伝子の「BRCA1」「BRCA2」に生まれつき変異があり、それが原因で生じる乳がんや卵巣がんのこと。変異があると一般の人よりこうしたがんが発症しやすい。

「男性乳がんがHBOCである可能性は約10%。女性乳がんの4%よりも高い」と大住医師。ある報告によると、男性乳がんの場合、0~4%にBRCA1変異が、4~16%にBRCA2変異があるという。HBOC関連がんの中には膵臓がんや男性の前立腺がんも含まれるが、割合的には低い。

こうしたことから、大住医師は乳がんと診断された男性には、HBOCであるかどうかを血液で調べる遺伝子検査を勧めている。この遺伝子検査は、男性の乳がん患者であれば現在、健康保険で受けられる。

HBOCの大きな特徴は、「若くして(50歳ぐらい)発症する点」、また、「発症後にがんを切除しても、残っている乳腺組織や反対側の乳房、女性の場合は卵巣にもがんが発症する可能性が高い点」だ。

そこで、がんを早期発見し、適切な治療を早期に受けられるよう、遺伝子診断の重要性が長年叫ばれてきた。そして、これまで自費(検査費は約20万円)だった遺伝子検査が、2020年4月から、以下の条件に当てはまれば健康保険が適用されるようになった。

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