「生産性が低い中小企業」意外と疎かにしがちな点 きちんと成果を出すためにはどうすればよいか

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次に、成果を出すためには戦略の“立案”と“実行”のどちらが重要か考えてみましょう。

市場の環境を緻密に分析、正しく踏まえたうえでセオリーにもとづいた効果的な戦略を立案しなければ業績につなげることはできない。これを満たした戦略をつくるのは非常に難しいので、立案のほうが大事だという方もいらっしゃるかもしれません。

おろそかになりがちな戦略の「実行」

しかし、私自身が戦略の立案・実行を20年以上支援してきた実体験から、“実行”のほうが重要かつ難易度も高いと断言できます。

理由は2つ。1つ目は、どんなに優れた戦略が立案できたとしても、実行できなければ成果は「0」だからです。もう1つは、きちんとしたプロセスを踏んで実行すれば、戦略の方向性が少々間違っていても軌道修正しながら成果を目指すことができるからです。

戦略の“立案”と“実行”の重要度を数値で示すと、2:8で“実行”のほうが重要です。

前述の「1.戦略で成果を出すポイントを間違っている」とは、ここまでお話ししたような、「効果的な戦略が立案できれば成果につながる」と考えてしまう誤解です。その結果、本来成果につなげるために必要な“実行”がおろそかになってしまうのです。わかっていても、立案だけでも時間と労力がかかるため、中小企業がついつい陥ってしまいがちな間違いです。

2つ目の原因、「戦略を成果に導く体制が整っていない」について、具体的に解説します。

中小企業には、戦略の推進担当者がいません。多くの中小企業では、戦略を学び立案するという役割を社長自身か一部の経営幹部のみが担っています。実行面についても同様です。これが戦略実行の大きな障害となっているのです。

中小企業の社長や幹部はプレイング経営者です。社長がいちばん実績を上げる営業マン、技術開発責任者、現場責任者という中小企業も少なくありません。こうした仕事をこなしながら戦略の実行、推進管理に力を入れようとしても、精神的、物理的に余裕がなく中途半端となってしまいます。

その結果、戦略を通じて成果を出すところまでたどり着けないのです。

将来の目標達成のために現場の業務より重要な戦略が、おざなりになってしまっては到底生産性の向上も望めません。

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