社歴を重ねた実務家社長が戦略で暴走する理由 「既存事業のテコ入れ策」ばかり見えすぎる罠
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社歴を重ね、自社の製品、顧客、組織に詳しい社長は、部下に安心感を与えるかもしれない。しかし、そうした社長の戦略が暴走する事例は後を絶たない。
30年に及ぶ研究を通じて、社業に精通した実務家たちが経営戦略をしくじる様を見続けた神戸大学の三品教授は、「戦略に必要なのは、構図、意図、潮目など、目に見えないものを視る力」だと指摘する。
それが意味するところとは何か。実務家のために書かれた教科書『実戦のための経営戦略論』から紹介しよう。
社歴を重ねるだけではなぜ足りないのか
百戦錬磨の実務家に本当に教科書などいるのかと疑う方もいるかもしれません。
しかし、私が2000年代に送り出した本を見ていただくとわかるように、社員の働きを稼ぎに換えることに失敗してきたのは、社業に精通した実務家たちです。
彼らは強欲でもなければ、不実でもないのに、経営戦略をしくじりました。
なぜ、社歴を重ねるだけでは足りないのでしょうか。経験を積めば確かに製品、顧客、組織に詳しくなりますが、戦略に必要なのは、構図、意図、潮目など、目に見えないものを視る力です。
数十年の経験を狭い社業で積み上げても、こうした力はなかなか身につきません。
メディアのキャンペーンに対する免疫も同様です。
かつてのFA(ファクトリー・オートメーション)や直近のDX(デジタル・トランスフォーメーション)など、「やったほうがよい」案件に資源を配分する傍らで、「やらなければならない」案件がなおざりになると、戦略は空を切ります。
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