臨時国会で異彩を放ったのは、自民党と日本維新の会が提出した衆議院議員の定数(議席数)を小選挙区で25、比例代表で20、削減する法案だ。1年以内に各党間の意見がまとまらなければ、この案が確定するという異例の立て付けで、各党の反発も強く、継続審議になる見込みだ。
この法案への批判は、まず手順の不備にある。これまで国会定数の削減などは、与野党共通のルールの変更であるから、慎重な取り扱いをしてきた。しかし、今回は与党のみで成立を目指した点が異例で、各党の反発を呼んだのだ。
そもそも議員定数削減は必要なのか。日本の国会議員数は、先進各国と比べても人口比では少ない部類に入り、多くの論者が削減の必要性を疑問視する。また議員数を減らすことによる節約額は多くはない。多党化時代に総議席を減らせば、小規模な政党(会派)が全ての委員会への出席はできなくなるなど、委員会運営が難しくなる。そのうえ、選挙区の議席を減らせば、一票の平等を確保する定数是正は格段に難しくなる。
「身を切る改革」という欺瞞
とりわけ、議員定数削減が「身を切る改革」だとされるところに違和感を抱く。議席数が多いことが政党や政治家にとってプラスだという、国会議員の地位があたかも政治家の特権であるような発想だからだ。
一般に国会議員が多い方がきめ細かく有権者の声を拾うことができる。議員は国会の「支店」のような存在である。その数を減らして不便になるのは、利用者である有権者の側でないのか。これが国会議員にとって身を切る改革だということは、理解に苦しむ。財政的な面で国民負担を減らすのならば、政治家の歳費(給料)のほか、公設秘書の数や、国会議員への経費補助を減らすという方法もある。
実態としては、定数を減らしても自分は生き残れ、懐も痛まないと踏んだうえで、安易に削減を訴えている政治家が少なくないのではないか。議員定数削減は「身を切る改革」ではない。定数削減論の背景には、政治家本位の発想が存在すると考えるべきだろう。




















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